グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~
1983年、内戦に揺れるアフリカ大陸のスーダン南部。北軍による突然の襲撃で両親を殺されたマメールは、兄のテオと姉のアビタル、生き残った子供たちと共に、ケニアを目指す人々の列に加わる。そこには、兵士になるのが嫌で北から逃げてきたという、ジェレマイアとポールの兄弟もいた。敵兵と出くわし、飢えと渇きに苦しみ、一人また一人と命を落とす子供たち。ある朝、マメールが敵兵に見つかるが、テオが自ら犠牲となって連行される。テオの代わりにチーフとなったマメールは、仲間を率いてカクマ難民キャンプに辿り着く。13年後、キャンプで育ったマメール(アーノルド・オーチェン)たちに、アメリカ移住というチャンスが舞い込む。医者になる夢を抱いて、JFK空港に降り立ったマメールを待っていたのは、女性は一般家庭が受け入れるという移民局の規則で、アビタル(クース・ウィール)と引き離されるという試練だった。職業紹介所で働くキャリー(リース・ウィザースプーン)は、今度の仕事もいつものように右から左へ片付けようと、カンザスシティの空港へ向かう。ロストボーイズと呼ばれる3人の難民、マメール、ジェレマイア(ゲール・ドゥエイニー)、ポール(エマニュエル・ジャル)に仕事を紹介するのだ。定住支援センターが用意した部屋に3人を送り届けたキャリーは、別れ際にマメールから「優しい夫が見つかりますように」と祈られてムッとする。スーダンではキャリーの年齢で独身の女性はまずいない。翌朝、キャリーは3人を面接に連れて行くが、珍回答の連続で断られてしまう。困り果てたキャリーはボスのジャック(コリー・ストール)に泣きつき、アメリカ流の笑顔の作り方や自己アピールの仕方を指導してもらう。「嘘はつきたくない」と抵抗しながらも、その甲斐あってポールは組み立て工場に、他の二人はスーパーで働くことになる。マイクとジェリーという名札を与えられたマメールとジェレマイアは、犬用の食べ物が売られていることに戸惑い、賞味期限切れの食品を捨てることに愕然とする。一方で素敵な驚きもあった。奇跡の食べ物ピザに出会えたし、職場で聞いた“ジョーク”というものには、一晩中だって笑える。新生活が、軌道に乗り始めたかに見えた3人。だが、ポールは素行の悪い同僚に勧められて麻薬に手を出してしまい、ジェレマイアは貧しい人に廃棄食品を渡しているところをボスに見つかってしまう。マメールは夢を叶えようと懸命に勉強していたが、戦火のフラッシュバックに夜も眠れなくなるほど苦しんでいた。そんな中、初めはイラついた彼らの純朴さに、いつしか心を打たれていたキャリーのもとに、悪い報せが入る。遂にポールが「いくら働いても誰にも相手にされない」と怒りと悲しみを爆発させて問題を起こし、警察に連行されてしまったのだ。そしてその事件は、マメールたちがひっそりと耐えていた痛みや不満を暴きたててしまう。傷つかないで済むからと、他人と距離を置いて生きてきたキャリーが、3人を助けようと立ち上がる。果たして、彼女の信じがたい決断とは──?
出演 リース・ウィザースプーン、アーノルド・オーチェン、ゲール・ドゥエイニー
監督 フィリップ・ファラルドー