弓子は、江戸川乱歩の愛読者。生前の乱歩が吐いた「僕は殺人快楽症になりたい」という言葉を巡り、乱歩が実際に人を殺して同潤会アパートの壁に埋め込んだという妄想に取り憑かれる。古い写真に写る美しい女と、乱歩との接点が紐解かれ始め、弓子は乱歩の親族、明智小五郎のモデルとなった人物、謎の美女にたどり着く。ついに、弓子の前に、乱歩の幻影が現れた。「彼女を愛してるさ、だから殺してみたいんだよ」ミステリー界のレジェンド、島田荘司による1983年の連作短編集「網走発遥かなり」は、島田荘司ファンだけでなく、広くミステリーファンに「知られざる名作」として語り継がれてきた。 中でも、江戶川乱歩の知られざる秘密に迫る「乱歩の幻影」は、島田荘司のリアルな体験から発想された、幻の名作である。島田荘司自身の手で書かれた脚本は、「20歳のソウル」監督の秋山純の手に渡り、2年の準備期間を経て映像化されることとなった。
