
薔薇のためいき
高校三年の平岡亜紀夫と笹原ユミは、来年に控えた大学受験の準備に余念がない。亜紀夫は学校でも一、二をあらそう秀才で東大志望だ。父の英二郎は仕事の鬼でめったに家に帰らない。ある日朝井涼子という女が突然亜紀夫の目の前に現われた。童貞の亜紀夫を甘美な陶酔の世界に導くのは、涼子にとって赤子の手をねじるようなものだった。亜紀夫は涼子におぼれ虜となり、情欲にのめりこんでいった。亜紀夫の異常さに気がついた英二郎は、原因が涼子だと知り狼狽する。かつて涼子は英二郎の秘書で愛人だった。妊娠すると手切金を与えて放り出したのだった。涼子は復讐を誓った。英二郎のもっとも愛する者を奪い、目茶目茶にしてやろうと。英二郎は、亜紀夫と手を切るよう懇願したが、冷たい微笑を浴びさせられた。そんな涼子を英二郎は暴力で犯し屈服させようとしたが、涼子は昔の涼子ではなかった。亜紀夫は涼子との情欲におぼれ、大学進学を諦め船乗りになりたいと思っていた。ある日、亜紀夫は父と涼子の秘密を知った。涼子はいつしか本気で亜紀夫を愛してしまっていた。捨てないでと哀願する涼子を亜紀夫は突きとばしく立ち去った。混乱した亜紀夫は海岸近くの廃屋に駈け込んだ。その亜紀夫を心配して追って来たユミは、美しい裸身をさらして亜紀夫に迫った…。