紀元前245年中国。時は春秋戦国時代。西方の国、秦で天下の大将軍になることを目指し日夜剣の修行に明け暮れる二人の少年がいた。名は信と漂。戦災孤児であり下僕として働いていたその二人の元に、ある日王宮に仕える大臣の昌文君が現れ漂を王宮で仕官させると告げるのだった。離れ離れになる二人だが「行き着く場所は同じだ」と誓い合う。しかしその後、王弟の反乱が勃発。漂の身を案じる信の元に深手を負った漂が戻ってきた。
漂の死の直前に託された地図を元に黒卑村へと向かった信は、そこで漂と瓜二つの少年、政と出会う。混乱する信の前に姿を現したのは政の命を狙う刺客の徐完。実はこの少年こそ秦王のエイ政…後の始皇帝であったのだ。「漂を殺したのは自分だ」と嘲笑する徐完に怒り、我を忘れるように剣を向ける信だったが、手も足も出ず倒れ伏してしまう。薄れゆく意識の中、しかし漂の無念を誰よりも感じている信はボロボロの体で再び立ち上がった。
驚異的な気力と剣技で徐完を倒した信。だが今度は王弟が差し向けた大軍により一帯を囲まれてしまう。逃げ場を失い強行突破を図ろうとする信と政。そんな二人の前に河了貂という子供が現れ、「抜け道がある」と告げる。貂の手引きの元、軍の包囲を掻い潜ろうとする一行。その最中、政の「漂は万が一のための影武者だった」との言葉に信は逆上。しかしそんな信に対し政は「漂はそのことを十分にわかっていた」と声を荒げるのだった。
漂の思いを知った信は自分達の路のため政についていくことを決意。「その為に利用するだけだ」と語る信に政も「お前はただの剣だ」と言い返す。そこに貂もカネのためと言って加わり一行は昌文君を筆頭とする大王派臣下との合流地を目指す。連日の疾走の末、辿り着いた先は美しい緑に囲まれた楼閣、四百年前の秦王、穆公の隠れ避暑地であった。そこで昌文君らの到着を待つ三人の前に不気味な殺気を放つ新たな刺客ムタが襲いかかる。
ムタと対峙した信は初めて感じた殺気の恐怖に怯み、本来の力を出せずにいた。しかし政の檄により自分が無意識に退がっていたことを知り、不退こそが自分の武器だと確信した信は血だらけになりながらも前に出る。殺気の呪縛から解放され、戦いの最中で進化をし始める信はついに反撃に出る。一方咸陽では、勢力争いに全く興味を示さなかったはずの伝説の大将軍、王騎の手により、無残な姿となった昌文君の首が王宮に届けられていた。
死んだと思われた昌文君は生きていた。政と再会を果たし、その無事に涙する昌文君に対し、漂の死の怒りをぶつけようと剣を振り上げる信。だが、その手は副官、壁によって止められてしまう。そして壁は最後まで漂の傍にいた者として、その様子を語りたいと申し出る。憮然とする信だったが、壁が語る漂の姿は堂々たる王の姿であり英雄のように語られる話に次第に心打たれる。己の未熟さに気付いた信は改めて将軍になる路を政に問う。
森田成一
信
福山潤
漂
釘宮理恵
河了貂
仲野裕
昌文君
遊佐浩二
壁