1965年、夏。名家の娘・文香は、鮎川コンツェルンの次男・光男と結婚式を挙げる。見合いの席でひと目惚れした光男と結ばれ幸福の絶頂の文香には、光男の裏切りなど知る由もなくて…。 新婚旅行から戻った文香は、義母のマキから、一日も早く跡取りを産むことを期待される。毎月排卵日に、子作りのために光男と別荘で過ごすよう言われ、困惑する文香。光男も結婚したとたん文香に無関心になり、自分は子どもを産むだけの道具なのか、と文香は空しい気持ちに…。そのうえ、義姉の未亡人・可奈子の意地悪な目も気になる。 そんなある日、文香は別荘近くの湖畔で絵を描いている航太と知り合う。
別荘で、文香は光男に、愛のある結婚生活がしたい、と訴える。が、お嬢さん育ちの文香に子どもを産む以外何ができるのか、と蔑まれ、強引に身体を奪われる。その日のうちに、光男はさっさと1人で帰京する。 夜、悲しい気持ちで湖畔を歩く文香は偶然、航太と再会する。航太と同じく絵が好きな文香は、航太を別荘へ誘い、画集を見せる。月明かりに浮かぶ文香の美しい横顔を見た航太は、文香の肖像画を描き始める。 翌日、東京に戻った文香は、女中たちが可奈子の娘・恵理香は光男の子らしい、と噂しているのを聞き、愕然とする。光男が信じられなくなった文香は実家へ帰ろうとするが…。
光男と可奈子の深い関係を知った文香は、いたたまれずに実家へ帰る。が、父親の秀夫から、何があっても光男を信じるよう説得され、追い返される。行くあてのない文香は、気がつくと別荘のある湖へ来ていた。航太に声をかけられ、思わずその胸にすがって泣く文香。自分でも不思議だったが、航太といると心が穏やかになり、何でも話すことができた。 そこへ、光男が文香を迎えにくる。自分を信じてほしい、と言葉巧みに訴える光男。文香はおとなしく鮎川家へ帰る。光男の父・光吉の指示で、航太が鮎川家で暮らすことになる。文香は喜ぶが、航太と一緒について来た女性にはっとする。
航太の妻・祐子が文香の身の回りの世話をすることになる。文香は祐子に嫉妬を感じるが、祐子が航太との結婚生活に失望しているのを知り、複雑な気持ちになる。数日後、文香はマキに連れられて、婦人科の検査へ行く。マキが自分を追い出そうとしているのに腹を立てた可奈子は、2人が出かけるとすぐ、光男との情事にふける。そこへ、文香が忘れ物を取りに帰ってくる。2人の浮気現場を目撃した文香はそのまま家を飛び出す。 文香は人気のない湖にボートを浮かべていた。航太が駆けつけ呼びかけるが、文香が立ち上がったとたん、ぐらりとボートが揺れて、文香は湖の中へ…。
湖で航太に助けられた文香は、胸に秘めていた航太への思いを告白。一度でいいから愛する人に抱かれたい、とすがりつく。文香は離婚する決意で、鮎川家へ戻る。すると、秀夫が倒れた、という知らせが…。文香は心筋梗塞で入院した秀夫を見舞うが、経営状態の悪い秀夫の会社のことで、光男から脅迫され、離婚できなくなる。 そんなとき、航太は偶然、鮎川家の座敷で愛し合っている光男と可奈子を目撃する。最低な男だ、と光男を睨みつけ、飛び出していく航太。そこへ、文香が帰ってくる。「もう、こんな家に戻らなくていい」航太は文香を連れて外へ出る。
愛する航太と一夜を過ごした文香は、その思い出を胸に、鮎川家へ戻る。文香と逃げる覚悟はできている、と引き止める航太をふりきって…。朝帰りをした文香の前に、可奈子が立ちふさがる。父親の病院に泊まった、ととっさに文香は答えるが、疑惑の目で見る可奈子。文香への思いが止められない航太は、祐子に離婚をきりだす。そして、恩人の光吉に辞表をさしだす。悲しみにくれる祐子の姿を見た文香は、航太にことさら冷淡になる。航太は文香に、自分と一緒に家を出るべきだ、とせつせつと訴え、抱きしめる。そんな2人を目撃する人影が…。