記憶の葉っぱ

愛媛県の南、佐田岬半島の突端に位置する伊方町。ここに金森一臣 (いちおみ・69歳) さんと薫 (かおる・69歳) さん夫婦が暮らしている。2人は同じ地元中学の同級生。中学時代、薫さんが一臣さんにラブレターを渡して交際が始まり、結婚、一人娘の出産…と二人三脚で人生を送ってきた。そんなある日、薫さんの様子がおかしいことに一臣さんが気づいた。意を決して病院での診察、その結果は「若年性認知症」。一臣さんはその現実に戸惑いながらも、役場を早期退職、自宅での介護を決意した。一臣さんの支えは辛うじて薫さんの記憶に「一臣」の名前が残っていること…。「薫ちゃん、私は誰?」「一臣さん!」。何度も繰り返してきたこの会話が、一臣さんの介護生活を支えていた。しかし、その一枚の「記憶の葉っぱ」が散ってしまう日がやってくる。