元禄十四年。世は徳川綱吉(小林稔侍)の治世、悪法といわれる「生類憐れみの令」が江戸では遵守されており、守らないものには厳罰が下されていた。そのころ江戸に、“逃がしの御前”と呼ばれる浪人がいた。公儀の役人に不当に追われている人間を見ると放っておけずに、自分が追っ手と対峙している間に逃がしてやることから付けられた異名で、“御前”とはどことなく高貴な匂いのするその端正な風貌からきていた。浪人の名は結城慶之助(田村正和)。心道無念流の達人で、その構えには一瞬の隙もなく、対峙したものは圧倒されて動けなるという“音無しの剣”の使い手であった。(C)テレビ朝日・東映