火魅子伝
我々の歴史とは異なった古代。耶麻台国に狗根国が侵略してきた。その強大な力の前になす術もない耶麻台国は、墨火を女王候補の六人に託して逃した…。時は現代、兄妹同然に育った九峪と日魅子は古代遺跡の発掘調査の現場にきていた。すると突然日魅子は炎に包まれ、九峪もろとも時空の歪みに飲み込まれてしまい…。
狗根国の侵略から三年後の耶麻台国。巫女である星華の、旧墨火の神殿に救世主が現れるという予言で、その救世主の救出に向かった伊雅と伊万里はそこでおぞましき出来事を目撃する。墨火無き跡には、死者を蘇らせ、生きる者には邪悪な力を増幅させるという闇の泉が湧き出しており、紫香楽はその力で自分の兵士を不死の軍団に仕立てていたのだった! 狗根国国王の来訪に一時中座した紫香楽のあと、神殿に潜入した伊万里たちの前に突然九峪と日魅子が現れる。事態の把握が出来ない両者に、紫香楽の不死の軍団・傀儡兵(くぐつへい)が襲い掛かる! 辛くも地下神殿から脱出した一行だが、九峪は日魅子と離れ離れになってしまう。
枇杷島から脱出した伊万里と九峪は、原生林の中で魔物に取り囲まれてしまう。弱まりつつある墨火の力を訝しみながら魔物を切り捨てる伊万里の側で、何も出来ない九峪は河岸に倒れている日魅子を透視する。その瞬間墨火の力が強まり、魔物は森に退散するのだった。九峪に墨火の力を見い出した伊万里だが、混乱している九峪と何かと言い争ってしまう。一方、伊雅とはぐれてしまった日魅子は、狗根子四天王の一人、帆佐に助けられる。帆佐の砦にやって来た日魅子に、旅芸人になりすました志野はただならぬ力を感じ取る。魔物の森を抜け、小さな村里で束の間の休息をとる伊万里と九峪は、突如ハニワ兵軍団の襲撃にあう!
村の焼き打ちから何とか逃げ出した伊万里と九峪。星華の待つ隠れ里に向かう間、なんとか互いの状況を理解しようとするが、どうもうまくいかない。紫香楽の引いた残党狩りの包囲網は伊万里の予想をはるかに超えたものだった。しかしそんな徹底した包囲網にもあかかわらず、いまだ誰一人として捕まらない状況に苛立つ紫香楽をほくそ笑む藤那。隠れ里に向かう途中で伊万里と九峪には伊雅と再会し、日魅子は敵の手中にあることを知る。里に着いた一行は、星華から九峪には大きな墨火の力が宿り、日魅子はその力を制御する役目にあることを知らされる。そしてついに九峪と耶麻台国軍との間に日魅子奪還という共通の目的がうまれた!
日魅子を紫香楽の命で征西都督府城に移送することが決まった。帆佐は自分が紫香楽に信用されていないことに疑念を抱くが逆らうことはできず、命に従うことにする。そのころ、征西都督府城に監禁されていた焔燬のもとに藤那が訪れた。藤那は、帆佐の砦にいる一人娘と墨火との関りを確かめてくれるように焔燬に依頼して…。
日魅子移送の前夜、焔燬は日魅子と再会した。彼女の中に感じとった墨火の力と“ヒミコ”という名前に、墨火とともに忽然と消え去った自分の娘と目の前の彼女の姿を重ね合わせるが、にわかには信じられなかった。日魅子の移送を待ち受けていた九峪たちは奇襲を加える。墨火の力を発露した九峪は日魅子奪還に成功して…。