地獄の蟲

江戸時代末期、奥州福島藩の城下町のひなびた山村に、悪どい高利貸し豪農弥左衛門が住んでいた。或る夜、盗賊黒雲団十郎一味がこの豪農一家を襲い、八人皆殺し、千両箱六個を盗んで逃げたという。村人は内心、天罰だと喜んだが、役人の命により山狩隊を組織し、盗賊の行方を追う。黒雲一味は、獄門権九郎、鉈の東兵衛、おさらば傳次、山猫の三次、お相撲の政、りゃんこの七、それに団十郎の情婦お登代の八人組。それぞれ、一くせも二くせもある悪人達で、土湯の山奥に逃げ込んだが、追手の追及は厳しく、一味は樹木の深い山中を逃げ惑う羽目になった。背中には重い千両箱、食糧も尽き、飢えと疲れで気持はすさむ。これに小判をめぐる葛藤が仲間割れを誘った。逃げる者、殺される者、一人、二人と減って行く。半獣的一団となり下がった彼等に、追手が迫る。何者も恐れなかった黒雲団十郎だが、ついに最期の時が来た。【映画】(C)マツダ映画社