小さな旅館

森田修平っは婿養子の順治を殺そうと決意した。順治はひとり娘敦子の夫であり、ある商事会社の次長をしている。年のわりには昇進が早い。しかしこれはとんでもない男であった。森田の家には山林が二千坪ほどある。父祖から受け継いだものだが、東京の郊外が広がってきたため、ざっと六億円の財産になってきた。いまから思うと、順治ははじめからこの財産を狙って婿に入り込んできたのである。やがて彼は外に女をつくる。酒を呑んで遅くなる。敦子に乱暴をする。ところが純情な箱入りの一人娘として育てた敦子は夫の本性を見抜けない。何をされても文句ひとつ云えず、はれものにさわるようにして夫の機嫌をとる。これでは自分に若しもの事があったら娘とその子はどうなってしまうのか?森田の不安といら立ちは次第に殺意を帯びてきた。(C)東映