チャーリー・セズ マンソンの女たち
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1969年8月9日未明、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)で知られる鬼才ロマン・ポランスキー監督の夫人であり女優のシャロン・テートがハリウッドの自宅の居間で友人4人とともに惨殺された。さらに翌8月10日未明、ロサンゼルスに住むラビアンカ夫妻が同様の手口で殺害された。これらの凄惨な事件は犯罪史上未曽有の猟奇残虐殺人として全米を震え上がらせた。69年末に逮捕されたのはチャールズ・マンソンとそのファミリー約20人。マンソンは自らをキリストの復活、悪魔とも称してヒッピーコミューンを形成、君臨していたカルト集団の首領。ビートルズの楽曲「ヘルター・スケルター」をもとにした独自の終末論は、やがて地球上に黒人が白人を皆殺しにする人種戦争が勃発、地底に身を潜めていたマンソン軍団が砂漠にある[悪魔の穴]から姿をあらわし、自身が世界の王となって黒人を自由自在に操るというものだった。この人種戦争の決行が<ヘルター・スケルター>であり、その引き金となったのがこれらの惨殺事件。そして殺人の実行犯はマンソンに盲従する二十歳前後の女たちを中心としたファミリーのメンバーだった。本作はマンソン・ファミリーの女性メンバーであり殺人の実行犯であるレスリー・ヴァン・ホーテン、パトリシア・クレンウィンケル、スーザン・アトキンスがいかにしてチャールズ・マンソンと出会い、洗脳と狂信の果ての殺人、そして逮捕、収監されるという負のスパイラルに堕ちていったかを描く。監督のメアリー・ハロン、脚本のグィネヴィア・ターナーの女性コンビは、実行犯のファミリーのメンバーにフォーカスし、残虐な殺人そのものではなく、カルト集団に参加するところから収監されるまで、主要な女性メンバー三人を中心にこの悲劇的な事件に至る過程を描き、今まで作られた数多くのマンソン関連映画作品とは異なる、マンソン事件に対する新たな見方を提示する。先に待ち受ける凄惨な出来事へと向かうマンソン・ファミリーの日常生活は、穏やかで和やかに綴られているものの、全体に重苦しく不穏であり、危険で異様な空気に満ちている。残虐で派手な殺人の演出や、新たな事実を提示するでもない本作は、世の中のどこであっても誰であっても起こり得る<洗脳・思考停止・狂信>のプロセスを描き、観る者に身近に起こり得るという恐怖を与える作品となっている。
出演 Matt Smith、ハンナ・マリー、スキ・ウォーターハウス
監督 メアリー・ハロン