プリズナー

東南アジアの海に浮かぶセライビア。この街並みを行く井沢圭吾30歳。訳あって高校教師を辞した圭吾は、兄と慕う譲原を頼ってこの国にやって来た。元ホストの譲原は、日本で貯めたお金でここに孤児院を建て子供たちの面倒を見ていた。圭吾の突然の訪問に驚くが、教師を辞めた理由も聞かずに喜んで受け入れる。ある日、ジョイ･サーガと名乗る男が孤児院を訪れ、5万ドルの寄付を申し出る。男は大富豪で、譲原の志に賛同したのだという。しかし、この出会いが、譲原のみならず圭吾のその後の壮絶な運命の幕開けだったとは、誰も予想出来なかった。

リゾート開発に絡む陰謀に巻き込まれ、投獄されてしまった圭吾。彼を救おうと駆け回っていた譲原は殺害され、日本大使館はこの件に関わろうともしない。元々の事なかれな姿勢に加え、間もなく帰国予定の大使館職員の宇部は、面倒な事が起こって帰国が延びたら困るのだ。最後の望みとなったジャーナリストの亜希だが、全てが金次第のこの国において正論など通じるはずがなく、警察署長ビッグボスへの抗議も無意味に終わる。納得のいかない亜希は自らの手でジョイを探し出し、圭吾の潔白を証明する決心をするが自ら危険に身をさらすことになって行く

ビッグボスの命令でアリが圭吾の尋問に向かう中、間一髪、脱獄した圭吾だったが、ポンが自分を警察に売ったことなど知る由もなく、ポンに手渡された連絡先に電話を掛け、ムタという男と待ち合わせる。ビッグボスは、圭吾の脱獄に怒りと焦りを露にするが、ポンの裏切りによって再び圭吾を捕えるチャンスを得ると同時に、亜希の居る孤児院にも警官達を仕向け、彼女を監視下に置く。やがて、ムタとの待ち合わせ場所に圭吾が現れる。周囲を警戒し、携帯と金、パスポートを受け取る。そして、ムタと別れた次の瞬間、周囲の私服警官が一斉に圭吾に近づく

圭吾が宇部に書いた手紙の500ドルは5万ドルに書き換えられ、宇部はそのままの額をリーンに渡してしまった。これまでポンが優しくしてくれた事の全ては、自分から大金を奪うための伏線であったことを知り、絶望のどん底に突き落とされる圭吾。ポンが釈放される時に圭吾が感じたあの悪寒は、このことだったのだ。ポンを探し出すという亜希に、無駄だと悲観する宇部。しかし、大使館に落ち度は無いと言いながら、圭吾がどういう人間なのか知った今、宇部の心は揺れていた。半ば亜希に脅された感はありながらも、宇部なりに動きだすのだった。

圭吾はビッグボスに金をちらつかせ、国外脱出しようとしていたポンを捕まえることに成功。ポンに裏切られ絶望してた圭吾だが、諦めず奔走する亜希やかつての教え子が立派に成長していることを知り、再び希望を取り戻したのだ。ポンを許す気はないが、彼もまた孤児院の子供たちと同じ身勝手な大人の被害者なのだ。狙いはジョイとビッグボスを引きずり下ろすことにあった。圭吾はビッグボスにジョイを捕まえ更に大金を手に入れないか? と持ち掛ける。借用書を偽造しジョイを陥れる計画だ。これに乗ったビッグボスは圭吾を釈放する段取りを整える。