お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました
豚の臓物、爆竹を客席に投下、全裸でステージから放尿、といった過激なパフォーマンス。吉本隆明などが評価し、多くの後進の世代をも魅了したたその類まれなる歌詞世界。ザ・スターリンを率いて時代を築いたミュージシャン遠藤ミチロウ。バンドを解散した後も、現在に至るまで、ソロを中心に活動を続けている。60才を迎えた2011年、ザ・スターリン復活ライブを決行し、そして全国を巡る自身の還暦ソロツアーを敢行する。そのさなか、3.11東日本大震災が起こり、故郷・福島は地震・津波災害と同時に、原発災害にも見舞われることとなった。それまで故郷をまったくと言っていいほど顧みることのなかった遠藤は、故郷の地でプロジェクトFUKUSHIMA!を行うべく始動する。自身のアイデンティティたる家族へ眼差しを向け、第二次大戦でガダルカナル、フィリピンと激戦地に赴いた父への畏敬にみちた思い、自身の代表曲「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。」にも強烈に込められた母へのアンビバレントな感情が赤裸々に語られる。本作は、遠藤のライブの旅と行く先々での人々との対話を描くロード・ドキュメンタリー。時代をつくり、駆け抜け続ける遠藤ミチロウというミュージシャン=ひとりの人間としてのシンプルにして力強い生きざまは、今を生きる人々に忘れかけた何かを思い出させることだろう。血肉を引き裂くようなヴォイスシャウト。還暦(60才)を超えてもなお躍動する、その肉体と声。なぜ歌い続けるのか?なぜ旅を続けるのか?過激なライブパフォーマンスと相反するかのような実直な語りで、男は明かす。その後遠藤は、膠原病を患い入院。一時はライブ活動の長期的停止を余儀なくされたが、本作公開を迎えるいま、見事に復帰。「THE END」「羊歯明神」という新たなバンドも結成、様々な活動を始動し、生命を燃やし続ける。今なお続くひとりの男の旅=生きざま。見届けよ!この旅は、終わらない。
出演 遠藤ミチロウ、竹原ピストル、大友良英
監督 遠藤ミチロウ

予告編