モービー・ドック

1965年、ニューヨーク・ハーレムで慎ましやかに生を受けたモービーは、やがて爆発的な勢いで世界的なスターダムを駆け上がる。モービーが展開する音楽活動は、驚異的なまでにバイタリティにあふれ、同時に特異性を有する。本作『モービー・ドック』でも同様に、バイタリティと特異性を基調とし、モービーの人生や成功を取り上げるだけでなく、アルコール依存症との薬物依存症との格闘、生きる意味や目的を絶えず追求する姿勢を見つめる。撮影の大部分をニューヨークとロサンジェルスで行った本作は、モービーにまつわる未公開映像が使用されているほか、モービーの友人でありメンターである、デビッド・リンチ監督とデビッド・ボウイが登場するインタビューやパファーマンスが織り込まれている。モービーその人と変わらず、刺激的かつ弱さを明るみにする本作は、真に独創的なレンズを向ける。圧倒的な異彩を放ち、人を引きつけてやまない、ひとり人間の人生と活動を綴るドキュメンタリーである。