南千住の線路わき、温泉マークの“ことぶき旅館”の女将阿部たね (沢村貞子) は初枝 (三谷幸子) という女中を使い、役所勤めの長女松子 (岡田茉莉子)、大学生の竹之助 (田浦正巳)、高校生の梅代 (桑野みゆき) の三人の子と幸福な日を送っていたが、母は、週一度訪れてくる和吉 (山村聡) という父親の妾であることを知る子供たちには何か暗い影があった。松子は同僚の須藤一夫 (佐田啓二) と結婚話が進んでいたが、一夫の母滋子 (高橋とよ) が阿部 (日守新一) の秘密を知るに及んで大反対、破談となった。一夫は気の進まぬ見合い結婚をし、自棄になった松子は家出した。二年後、松子は神戸元町のキャバレーでダンサーとなっていたが、ある夜、思いがけず一夫を客として迎えた。