鳥取藩御納戸役小倉彦九郎 (三國連太郎) は、主君と共に参勤交代で在京すること一年二カ月の後、懐かしの国許へ向かった。彦九郎は江戸での加増を、一刻も早く家で待っている愛妻のお種 (有馬稲子) に知らせようと心をはやらせた。帰国してしばらくたつと、彦九郎は何か周囲の変な様子に感づいた。義兄の政山三五平 (殿山泰司) をたずねるが、妹のおゆら (日高澄子) も、義母のお菊 (毛利菊枝) も、口を濁して語ろうとしない。彦九郎はそこで伯父の黒川又左衛門 (東野英治郎) のところに行った。又左衛門は苦い顔をしながらお種と鼓師宮地源右衛門 (森雅之) の不義密通が、家中に知れわたっていることを告げた。彦九郎は家にもどってお種を激しく詮議したが、彼女の目には一点の影もなかった。