仕事も恋もうまくいかないし、一人で頑張るのにも疲れた。ヒロインの千鶴は、都会生活から逃げるように小さな町を訪れる。人生に迷う彼女をゆっくり休息させて、たっぷり栄養を与えるのは、山奥で静かに暮らす青年、田村。出会うはずのなかった二人が出会い、互いの止めていた時計がゆっくりと動き出していく。 ヒロインには『いちばんきれいな水』『デトロイト・メタル・シティ』の加藤ローサ。生きることが不器用「な女性をリアルに演じ、ストレス社会に生きる人々の共感を呼ぶ。千鶴を静かに見守る田村には、チュートリアルの徳井義実。今回が映画俳優として本格デビューとは思えないほど自然体で演じている。監督は『夜のピクニック』『青空のゆくえ』など瑞々しい映像で定評のある長澤雅彦。人気作家・瀬尾まいこの小説「天国はまだ遠く」(新潮社刊)を長澤監督自身が共同で脚本を執筆、映画化した。 撮影は、日本三景の一つ、天橋立で知られる京都府宮津市で、地域のみなさんの全面協力のもと行われた。赤く色づく山と淡い光に包まれる日本海、劇中に出てくる宮津ならではの蕎麦や食卓に並ぶ料理は、もう一つの主役でもある。 エンディングテーマは、『バッテリー』や『金八先生』挿入歌などで知られる、若手実力派の熊木杏里が歌う「こと」。また、透明感ある挿入曲は、「のだめカンタービレ」や『神童』などでピアノを担当したクラシック界の貴公子・清塚信也が演奏しているのも注目だ。