家族X
主婦・路子(南果歩)が日々寸分の狂いもなく配膳する食卓は、寸分の狂いもないがゆえに家族の息吹がふきこまれることはない。夫・健一(田口トモロヲ)にとっての家は、帰る場所ではなく、終わりのない回廊が張り巡らされた辿り着けない場所だ。大学を卒業しても正社員になれずフリーターをしている息子・宏明(郭智博)は自分がどこにもいないことを知っている。東京郊外の新興住宅地。橋本家もほかと同様、砂上の楼閣のように揺らめき、足場を失っている。姿はあるのに誰もいない椅子、いない部屋、いない家は、最初に路子がバランスを失ったことで傾き、大きな渦に呑み込まれていく・・・。住宅街、会社、学校、そして家庭というコミュニティのなかで規格外であることが許されない重圧に埋没し、虚空を抱え、もっとも近しい家族を、そして自身すら見失ってしまう路子たち。しかしそれは、もう一度互いを回復していくための痛みを伴う旅の始まりだった。
