弓

海の上、ふたりきり。老人は少女に永遠の夢を見た。広い海の上にぽつんと浮かぶ一隻の漁船と、寄り添うように揺れるボート。そこには老人と少女が二人きりで暮らしていた。海の上、二人きり、老人には少女が全てだった。どこからともなく少女を連れてきてから10年。老人は慈しむように大切に少女を育ててきた。17歳を迎えたそのときに結婚式を挙げることを心待ちにしながら。しかし、少女が17歳の誕生日を三ヶ月前に控えたある日、老人の営む釣り船に大学生らしき青年が訪れる。少女は一目で恋に落ち、青年もまた少女の無垢ながらも妖艶な微笑みに心を奪われてしまう。老人と少女、二人だけの世界が次第に揺らぎ始める。老人、少女、青年、3人の間の緊張が、ぴんと張った弓のように増していく・・・・・・。