第二次世界大戦末期のハンガリー。幼い双子の“僕ら”は、小さな町の祖母の家に疎開する。当初、父親は、双子は目立つという理由で、引き離す事を提案するが、それに反対した母親が祖母の暮らす田舎に連れてきたのだ。粗野で不潔で、村人からは「魔女」と呼ばれる祖母の下で、“僕ら”の過酷な日々が始まった。“僕ら”の仕事は、薪割り、水汲みなどであったが、ろくな食事や衣服も与えられず、また学校にも行けないため、真っ暗な部屋の中、聖書と辞書だけで学んでいた。そんなある日、リンゴやジャムを路上で売るために、町へ出かけると、“僕ら”よりもひとまわり以上も大きな女の子が万引きをする。彼女は、目と耳が不自由な母親と暮らしていて、売春や盗み、何でもしていた。そんな彼女に刺激を受けた“僕ら”は、厳しい戦時下を生き抜くために互いを罵倒し、殴り合うなど様々な“練習”を自らに課し、精神と肉体を鍛えていき、そんな日々を父親からもらったノートに綴っていく。眼にしたもの、耳にしたもの、ただその真実だけを克明に書き記す事が、“僕ら”の無垢な悪をも成長させていくのだった…。