めぐる。

6歳の娘を持つ中堅企業で働くサラリーマン・伸之（43）。2年前に妻と離婚し、今は娘の美歌を育てながら働いている。ただでさえその両立に苦心していたのに、コロナになってしまったことでますます大変になり、自分の子育てが正しいのかどうか不安に感じている。 「めざましテレビ」の占いを観て、大人になって以来滅多に食べなくなったケーキを珍しく買いに行こうと彼が思い立ったことで、「幸せ」がめぐり始める。

東京近郊で一人暮らしをしている、71歳の女性・則子。2年前に夫が他界し、長らく暮らしていた日本家屋で今は一人で過ごしている。コロナになる前は、嫁いで長い娘がしょっちゅう孫を連れて遊びに来ていたのだが、今では新型コロナウイルス感染の心配があるため一切姿を現さなくなった。もしかしたら、このまま二度と来てくれないのではないかと不安に思っている。自分自身が「不要不急」と言われている気がして滅入っていたところに、「めざましテレビ」の占いを観て、久しぶりに夫の墓参りに行こうと思い立つ。

伸之と同じ中堅企業で働く、若手サラリーマン・栄太郎（28）。かつて、取引先の会社の担当者のあまりにも横暴な態度が許せず思わず暴言を吐いてしまった際、先輩社員の松岡（45）がそれをすべて自分のせいにして責任を負って会社をクビになった、という経験を持っている。その松岡が脱サラして飲食店を始めたことを知っており、恩人でもあるのだから食べに行こうと思っていた矢先にコロナ渦になり、「不要不急」を理由に一度も店に行っていない。地方への転勤が決まってしまい、いよいよ今日行かないと二度と行けないかも、というその日、「めざましテレビ」の占いを観て、今日こそ行こうと決心する。

女子バスケットボール部に所属している高校三年生の少女・百合子。子供の頃からずっとバスケに打ち込んできて、三年生で迎える全国大会に出場することを目標にしてずっと頑張ってきた。一学年上の夏子先輩が憧れの存在で、いつも夏子（19）にアドバイスを仰いでいた。去年の夏、コロナを理由に大会が中止になり、目標を失った夏子が自暴自棄になったことを辛い気持ちで見ていた。なのに、今年は大会が行われることが決定。先輩が出られなかった大会に自分たちの代は出られることに複雑な感情を抱いていている。

バスケの大会へ向かう百合子。しかし電気系統の故障から電車が遅延している。大会に間に合わないと思った百合子はバスで移動しようと思い立つもバスにもたくさんの人が並んでいる。するとバスの列に並んでいた栄太郎が百合子のチェックのマスクに気が付く。栄太郎はこのバスに乗って、転勤前のラストチャンスに松岡の店へ食事に行きたかったが、めざましテレビの占いにあった「いつもしないことに挑戦」しようと、百合子と列を変わる。

会議が思ったよりも早く終わったため、松岡の店に行こうとする栄太郎。しかしタクシーアプリでは配車できず、電車では間に合いそうにない。偶然居合わせた伸之が栄太郎のチェックのマスクに気が付く。伸之は娘・美歌と特別なケーキを買って帰る約束をしていた。車で会社に来ていた伸之は「いつもしないことに挑戦」しようと、栄太郎を松岡の店まで送ることにする。