戦国末期、出羽国米沢堂森(上杉領)。月夜の庭に直江兼続と前田慶次の姿があった。「しばし昔を物語るかね…?」 上杉家の存亡が掛った戦いで「義」に生きた二人の武将が月に興じて盃を交わす。遡ること、天正16年夏の京。兼続は後妻(うわなり)打ちの見届け役を頼まれる。後妻の助っ人に天下無双のいくさ人、前田慶次がいた。次郎坊の情報で茂助を伴い兼続が向かったのは遊郭、西洞院。座敷で琵琶を奏でる慶次の背後に無言で立った兼続は…。
刺客達を一閃のもと倒した慶次と兼続。二人の運命が大きく動いた瞬間であった。上杉家家臣、山田喜八の屋敷前妻組と後妻組が揃い、後妻打ちが始まろうとしていた庭に座し、虎皮の仮面を深く被り成り行きを見守る慶次。兼続が慶次の前に歩み出るが、その手には大きな包みと何故か蠅打ちがあった兼続は蠅打ちを振り「邪魔立て無用」と包みを渡す。中身を見た慶次は震える手で刀に手を掛けるが、兼続から凄まじい覇気が吹き上り、その姿が…。
「佐渡はいらにゃあきゃあ?」 佐渡平定を果たせ、と豊臣秀吉は上杉景勝に圧力をかける。蘆名氏の暗躍と聞き、景勝は眉間のシワを深く刻む。本国寺にて激昂する景勝に、兼続は言った。「これは罠かと」 二人は腹を決めた。西洞院の座敷で慶次に佐渡攻めについて語る兼続。そして慶次に別れを告げた。琵琶の音が流れる。上杉軍は本国寺を佐渡に向け出発した。しかし異形の男が立ちふさがり鉄砲を弾くという。兼続は馬を駆り、異形の男と対峙したが…。
天正17年6月、佐渡平定に乗り出した上杉軍を陣中迎え入れるのは、北佐渡の地頭、河原田本間高統(かわらだほんまたかつな)。しかし、その裏には本間家 、ひいては豊臣秀吉の陰謀が潜んでいた。鴻の川を挟んで河原田本間家の陣と羽茂本田家の陣が相対していたが同時に膠着状態だった。大いびきを掻く高統に、藤田信吉が詰め寄る。しかし高統は言った。「これは佐渡の戦だ、迂闊に動けない」 業を煮やした藤田信吉は、敵陣に突入を図ったが…。
鴻の川 が血で赤錆色に染まる。旗も武器なく無抵抗に倒れていった老兵たちは、本間高統に家族を人質取られた農民であった。兼続は老兵たちの進軍が秀吉の使者が到着するまで時間稼ぎだったことを見抜いてた。そして旗印が南佐軍と北佐軍の口裏合わせとなっていたのだった。旗があれば南佐軍は本気で戦わない、その油断を逆手に取る兼続の奇策。「地獄も極楽先は有明の月心にかる雲なし」 そこには兼続の見事な覚悟があった…。
佐渡平定の報を聞き秀吉は「兼続と慶次が欲しい」と独りごちた。佐渡では本間高季の首がさられていた、再起の為向かった越後の浜で討たれたのだ。その潔さに義を感じる兼続と慶次、問題は義なき本間高統だった。河原田城では宴が催されていた。大トラになって踊る高統、景勝らは静か杯を傾けている。兼続は銚子を差し向け高統にすすめた。ところが高統は役不足だと景勝を指し、なんと杯の酒を打ちかけた! そこには上杉家の秘中が潜んでいた…。
浪川大輔
声の出演
佐藤拓也
川本成
郷田ほづみ
安元洋貴