時は江戸時代初頭、天下太平の世の中。駿河大納言・徳川忠長の命により、通常は木剣によって行われるべき御前試合が、真剣をもって行われようとしていた。この御前試合で対決する、藤木源之助と伊良子清玄。藤木は片腕を失い、伊良子は盲目であった。この二人は、不世出の剣士とうたわれた岩本虎眼の道場でのかつての同門。異様な構えを取る伊良子…。二人が出会い頭角を現し、虎眼道場の跡継ぎとして目指す武士道の頂点。しかしその頂点に立てるものは一人しかいない。この二人の葛藤を縦軸に、数奇な運命を横軸に、織り上げた運命の物語。
エピソード1
駿府城御前試合
時は天下泰平の江戸時代初頭、駿府城。徳川御三家の一角、忠長の命により天下の法度にそむき挙行される暴挙、それは真剣を用いての御前試合。その第一試合に登場するのは恐るべき因業の果てに対峙する二人の美しき剣士、藤木源之助と伊良子清玄であった…。
エピソード2
涎小豆
濃尾無双の誉れ高き岩本虎眼の道場破りに現れた美剣士、伊良子。死闘の末、師範代の藤木を破る伊良子。しかし、師範の牛股権左衛門に敗れ、囚われの身に。虎眼流入門を願い出た伊良子に待ち構える入門の秘儀、涎小豆。果たしてその秘儀とは…。
エピソード3
鎌鼬
虎眼流入門から一年、めきめきと腕を上げる伊良子、その伊良子に密かな闘志をいだきながら腕を磨く藤木。一人娘、三重の成長を確認した虎眼はより強い種となるべく後継者を決めようと、慶長以来の剣客、舟木一伝斎の双子の息子、兵馬と数馬を討ち取ったほうを虎眼流の跡継ぎにすると告げる…。
エピソード4
童歌
舟木兄弟を討ち果たした、藤木と伊良子。舟木兄弟に先手をうった藤木は高弟らに評価されるが虎眼からの沙汰はない。一方、伊良子は虎眼の愛妾、いくに近づくがその不忠の動きを師範、牛股に知られてしまう。しかし稽古納めの儀に際し、虎眼が「種」として選んだのは伊良子、その夜、失意の藤木の前に舟木道場からの刺客が現れた。
エピソード5
秘剣伝授
刺客との戦いの中で秘剣の糸口をつかんだ藤木。まだ剣は藤木を見捨ててはいなかった。一方、曖味な状況から覚めた虎眼はいくと伊良子の不徳に気づき、突然師範以下の高弟たちを道場に集め虎眼流の聖地、秋葉山にて秘剣伝授の儀を行なうことを告げるのだった…。
エピソード6
産声
秘剣伝授の儀式は牛股との手合わせで始まったが、寸止めのはずの木刀は深く、伊良子の体にねじりこまれる。「秘奥の伝授」とは名ばかりの伊良子への制裁であった。藤木との対戦を経て正気をなくした伊良子に対し、高弟らはいく自身にけじめを要求する。儀式が幕を閉じた時、虎眼流の運命を変えていく「怪物」がその産声をあげるのだった。
篠原恵美
浪川大輔
佐々木望
加藤精三
桑島法子
屋良有作
浜崎博嗣
水上清資