東野圭吾 変身

画家を夢見ながら工場のラインで働き地道に生きてきた成瀬純一 (神木隆之介)。恋人･恵 (二階堂ふみ) と育むささやかな幸せを大切にしていたが、クリスマス･イヴに、婚約指輪を受け取りに立ち寄った宝石店で強盗事件に遭遇し頭に大けがを負ってしまう。緊急手術によって一命を取り留めたが、退院後、周囲とうまくなじめないことに気付き不安を覚える。あれほど好きだった恵に対しても、ふと、異なる感情が芽生え…。

職場に復帰した純一だが、突然仕事に積極的になり同僚と激しい摩擦が生まれる。そして、隣人の立てる物音に過敏に反応するなど、純一の攻撃衝動が高まりを見せていく。不安と恐怖を感じた恵は病院で「脳移植」という言葉を立ち聞きしたことを打ち明ける。2人は手術を担当した堂元 (伊武雅刀) を問いつめるが、堂元は冷静に対応、精神分析を提案してきた。そして催眠状態の中で純一が見たものは…。

バーでピアノの音をきっかけに暴力事件を起こした純一は、自分の脳の中に他の誰かがいることを確信、恵の制止を振り切って、ドナーにあたる人物を探し始めた。そして、強盗事件の犯人･京極 (渡部豪太) にその可能性があることを知ってしまう。純一と口論となった恵は、医師･橘直子 (臼田あさ美) から純一と別れるように諭された。手術前の自分を知っているあなたがそばにいることが純一を苦しめるのだ、と。恵は…。

純一は気付いた。自分が凶暴化しているのは単に京極になろうとしているからではないということに。恵が去り、ひとりになった純一は、心配を装って近づいてきた直子を乱暴に抱く。しかし、直子が裏切ったと感じたとき…。故郷へ帰っていた恵は純一のアパートの近くで犬が惨殺されたというニュースを聞いて不安になり、刑事･倉田 (村上淳) に助けを求める。しかし倉田が純一の部屋を訪れたとき、そこにはもう誰もいなかった。

以前の自分に戻りたい。追われる身になりながら、もがき苦しむ純一の前に現われたのは帰ってきた恵だった。恵をモデルに必死に絵を描く純一。そして、ついにある決意を固める。自分自身を取り戻すために…。人の心とは、一体、どこにあるのか。脳とは? 命とは? 禁断の医療技術の前に「心」が立ち向かう術はあるのか。