
ビブリア古書堂の事件手帖
物語の舞台は、鎌倉でひっそりと営業をしている古書店・ビブリア古書堂。その店主・篠川栞子(しのかわ・しおりこ)は、若くきれいな女性だが、初対面の人間とはうまく接することができない極度の人見知り。しかし、古書に関する知識は右に出る者がいないほど豊富で、本について話す時には人見知りということを忘れるほど、雄弁にして情熱的。その彼女が、さまざまな古書にまつわる謎や秘密を、古書に関する膨大な知識量と、鋭い観察眼で解き明かしていく・・・。また、ある出来事がきっかけで主人公・篠川栞子が店主を勤めるビブリア古書堂でアルバイトとして働くことになるのは、本に対しての興味は人並み以上にあるものの、幼いころのトラウマから“活字恐怖症”となった五浦大輔(ごうら・だいすけ=30)。店主とアルバイトという関係性になる栞子との掛け合いや、互いに異性として気にはしているものの、つかず離れずの距離感を保ち続け、時に見るものをもどかしい思いにさせるほど淡く繊細な恋模様の行く末にも注目したい。さらに、その価値が分からず安売りされている古書を見つけては、他の店で高く売り、利ザヤを稼ぐ「せどり屋」を生業(なりわい)にしている謎の男・志田肇(しだ・はじめ=52)は、ひょんなことから、ビブリア古書堂の奥にある母屋の一部屋を倉庫兼寝床として使用する謎に満ちた男だが、古書の金銭的な価値に関しては栞子をしのぐほどの知識を持っており、栞子と大輔が挑む謎解きに重大なヒントを与えることがある一方、豪放磊落(らいらく)な性格から、事態をかき回してしまうことも。 原作の「ビブリア古書堂の事件手帖」(メディアワークス文庫)では、言わばホームズ役の篠川栞子(剛力彩芽)と、ワトソン役の五浦大輔(AKIRA)の2人だけで古書にまつわるミステリーに挑んでいく展開だが、今回の映像化にあたっては、栞子と大輔を見守りつつ、2人の推理や関係性に重大な影響を与える“もう一人のキーパーソン”として志田肇(高橋克実)を投入。原作に一味加え、「3人が謎を解いていく」、「3人がそろって初めて謎の全貌(ぜんぼう)が見えてくる」という、“謎解きトリオ感”を作品のメインイメージに据え、物語の展開を図っていく。およそ相入れない関係性に見え、それぞれに個性的な3人のキャラクターを、剛力彩芽、AKIRA、高橋克実という絶妙なキャスティングにして、トリオとして絶対的なバランスを保つ俳優陣が演じることにより、『ビブリア古書堂の事件手帖』に、時に切なく、時にシリアスで、時にコミカルといった多面性を与え、ドラマを重厚で味わい深いものにすることは間違いない。電子書籍などが持てはやされるデジタルな時代だからこそ、本は出版物としてだけではなく、それを手にした人自身の歴史や絆(きずな)を紡いでいくバトンにもなり得る存在として、あらためてその良さ、そして価値が見直されている。 『ビブリア古書堂の事件手帖』では、時間や場所を超えて受け継がれた「古書にまつわる謎」を解き明かしていくミステリーであると共に、リアルに手に取ることができる“本”そのものだからこそ、隠すことのできた秘密や、託すことのできた思いを、時に切なく、時にハートウォーミングな人間ドラマとして描く作品。一冊の古書にまつわる謎、そしてそこから紡ぎだされる人間同士の深い絆(きずな)を描く、これまでにはないヒューマンミステリードラマに乞うご期待。