向こうの果て

昭和60年、東京。痴情のもつれから、マンションの一室で放火殺人が発生する。逮捕された池松律子 (松本まりか) と、死亡した小説家･君塚公平 (松下洸平) は幼馴染だった。事件を担当する検事･津田口 (柿澤勇人) の取り調べにも、どこか浮遊しているような態度でするりと躱す律子。保険金目当てで殺したと言い張る律子だが、真意が掴み切れない津田口は律子がこれまで関わってきた男たちを調べ始める。

放火殺人で逮捕された律子。彼女の両親もまた火事で亡くなっていることに着眼した津田口は、当時12歳だった律子を引き取った叔父の行島道夫 (宇野祥平) に会いに行く。多くを語りたがらない行島だが追及していくにつれ律子と行島の本当の関係を知る津田口。一方、律子の故郷･青森から刑事･村上姫昌 (加治将樹) が検察にやってくる。捜査協力で資料を届けにきたという彼は、実は律子のもう一人の幼馴染だった。

律子と公平のもう一人の幼馴染･村上の話を聞く津田口。幼い頃からずっと一緒だった3人。彼らの父親たちは民謡一座を組み津軽で人気を博した一方、律子の父･喜平 (塚原大助) の横暴な態度が原因で人間関係は複雑だった。律子の両親の死後、一度は疎遠になるも村上は律子に想いを馳せ続けた。そして10年後、東京で風俗店に勤める律子と再会し結ばれる。しかし、あることがキッカケで幸せな生活も長く続かなかった――。

公平殺害事件の第一発見者であり律子の最初の夫だった京波久雄 (豊本明長) が証言者として検察を訪れる。彼もまた律子の魅力に取り憑かれた男であり、別れてもなお律子から離れられず執着してきた。京波は死の直前まで公平とも何度か会っており、律子と公平のどこか超越した関係も感じ取っていた。そして今まさに律子と向き合っている津田口さえも律子に取り憑かれ始めていることに警鐘を鳴らすが――。

津田口は律子の二番目の夫、山之内一平 (渋川清彦) を尋ねる。元プロ野球選手だった山之内は律子と出会ってからケガが原因で球団を解雇され、今はしがないヤクザの組員となっていた。律子と暮らしたことで人生が転落の一途を辿ってしまったという過去を回顧する山之内から、律子という女の危うさを聞く津田口。一方取調べでは、自身のことを淫売女だと形容する律子が幼少期に受けたトラウマも少しずつ垣間見えてくる――。

公平殺害事件の真相を紐解く鍵が律子の故郷にあると睨んだ津田口は、青森県弘前市を訪れる。村上の案内のもと、村上の父･松夫 (泉知束) や公平の父･隼吾 (浜谷康幸) の話を聞く。そこで明らかとなってくる律子と公平の過去に衝撃を受けた津田口は帰京後すぐに取調べに向かう。一方で、津田口が律子の事件に肩入れしていることが検察内では問題視されるようになっていた――。