天狗の台所

NY育ちの少年･オンは、ある日自分が天狗の末裔だと知らされる。天狗のしきたりにより、14歳の1年間、日本で暮らす兄･飯綱基 (いづなもとい) と隠遁生活を送ることに。天狗といっても特別な力はなく、兄の関心は、もっぱら日々の食と素朴な暮らしに向けられるのだった。「特別な力がないんだったら、ただのヒューマンじゃん!」と肩透かしをくらうオンだったが…

田舎での暮らしと飼い犬･むぎに話しかけられる生活にまだ慣れないオン。ある朝起きると、近所に住む夫妻が鶏肉をおすそ分けにきていた。と、基の傍らに見知らぬ男性が。彼は愛宕有意ーオン達と同じ天狗の末裔で、週末になると基のところに遊びにくるのだという。陽気で距離感の近い有意に最初はとまどうオンだったが、料理を通してすこしずつ心を開いていく。そんな中、有意から「天狗一族」について教えてもらったオンは―

夏の盛りの庵。食べたい物の話をしていると有意がかき揚げ入り鍋焼きうどんを提案する。驚くオンだったが、基と有意は夏に食べるそれに何やら深い想い入れがあるようで…

秋。山で足をくじいてしまったオンは、怪我をいたわってくれる基の優しさにまた少し心を開き始める。一方、都内で忙しく働く有意の元には2人から栗のおすそ分けが届き―。

足首を痛めたオンは基の提案で山の温泉へ湯治に行くことに。すると基は桃とプラムで何やら仕込み始め―。秋は深まり、村の人々は庵に集って毎年恒例の収穫祭を開催する。