「猫」を斬れ。時は幕末。かつて畏怖され尊敬された剣客は、今や浪人となり身をやつしていた。困窮する男に久々に舞い込んだ仕事、それは「猫」を斬れというものだった。飼い主を骨抜きにする魔を持つというその化け猫。しかし、この小さな生き物との出逢いが、男の小さな生活を鮮やかに変えていく…。
エピソード1
第1話
元・加賀藩剣術指南役、斑目久太郎 (北村一輝)。かつては「まだら鬼」と呼ばれ恐れられた剣客だったが、今はしがない貧乏浪人としてほおずき長屋でひとり静かな暮らしを送っている。剣以外で稼ぐことを知らない久太郎の生活は困窮しており、若菜 (平田薫) の売る甘菓子『どなつぼう』の屋台を横目に夕食のザリガニを釣る有様だ。一方、ひょんなことから久太郎の剣術を目にした呉服問屋加賀屋の番頭、佐吉 (水澤紳吾) は、主人の与左衛門 (伊藤洋三郎) をとりこにしている白猫『玉之丞』の暗殺を久太郎に依頼する。
エピソード2
第2話
結局、化け猫ならぬ白猫の玉之丞を匿ってしまった久太郎。佐吉には、悪霊退散の札が貼られた壷を『猫壷』と称して渡し、中に封じ込めた風を装い誤魔化すことにしたのだ。報酬の三両を持ってきた佐吉は、主人の与左衛門が町奉行所から『水責めの政』と恐れられる同心の石渡政道 (ユキリョウイチ) とその子分の八五郎 (川村亮介) を呼び、犯人探しを始めたことを久太郎に伝える。ほおずき長屋。隣に越してきた若菜の突然の訪問に続き、大家からも猫の存在を怪しまれた久太郎は玉之丞を隠し続けることに限界を感じ、神社に放つことを思い立つ。
エピソード3
第3話
ノミに襲われ、たまらず家を出る久太郎。と、そこには先日命を助けた義一が。義一は、ノミなら『しゃもん』で手入れを! と久太郎に『猫見屋』を紹介する。謎の『しゃもん』を求め、玉之丞を連れ猫見屋へ。看板には【猫のことなら何でもおまかせ】と大きく書かれていた。女主人のお七 (高橋かおり) は玉之丞をブラッシングしながら、「それは『しゃもん』じゃなく『シャボン』だ」と、久太郎に石鹸を渡し、玉之丞を洗ってあげるよう促す。いまだノミの残る玉之丞と長屋に帰った久太郎の下に、同郷の置き薬屋、五郎 (佐藤誓) がやってくる。
エピソード4
第四話
「にゃー!」腹を減らした玉の丞の鳴き声がほおずき長屋に響く。職種にこだわる久太郎は依然として無職のまま、貧乏生活は続いていた。冷えた鰹節御飯を玉の丞に差し出す久太郎。しかし、玉の丞は少し嘗めただけ。よく見ると少し痩せたようだ。表通りでは、猫耳をつけた若菜が屋台で商売に励んでいる。『どなつぼう』は、棒状から可愛い猫の顔に形を変え、同時に『どにゃつぼう』と名称も変更したらしい。久太郎は、食欲不振の玉の丞を連れ猫見屋を訪ねる。お七は究極の猫まんま『猫飯』を買うよう勧めるが、高価すぎて久太郎には手が届かない…。
エピソード5
第五話
心機一転傘貼りの仕事を始めた久太郎。案外筋はよく、作業は順調だ。満足げに完成した傘を眺めるていると、「ガラガラガッシャーン!!!! 」吊るしていた傘が音を立て一斉に落ちる。もちろん犯人は玉之丞だ。久太郎の殺気を感じ、玉之丞は「反省」とばかりに自ら押入れに入る。その後も、ちょっと外出した隙に部屋をめちゃくちゃにされ、玉之丞の果てしない奔放さに疲れた久太郎はお七を訪ねる。猫見屋。お七に撫でられ、机の上の玉之丞は気持ちよさそう。
エピソード6
第六話
「好きな言葉は猫の恩返しっ…。」しょうもないことを言いながらガックリとうなだれる久太郎。今日も傘は作った端から玉の丞に台無しにされていた。いたずら後の定位置、押入れに入れられる玉の丞。しかし今日はなんだかおとなしい。時を同じくして、加賀屋では主人の与左衛門がうなされていた。玉の丞が暗くて狭いところに閉じ込められ、助けを求めている夢を見たのだ。その話を聞いた佐吉は猫壷の封印を確かめに行く。
北村一輝