戦後間もない昭和20年代後半を舞台に、癖のある魅力的な登場人物と、民俗学や倫理学、妖怪など様々な分野の薀蓄 (うんちく) がぎっしりと詰め込まれた不思議な世界観で多くのファンを獲得している京極夏彦の大人気小説「百鬼夜行シリーズ」。その中でも最高傑作の呼び声が高い『魍魎の匣』を舞台化!
EPISODE 101
Moryo no hako
戦後まもない東京――。ひとりの少女が電車にはねられ、病院に運び込まれた。少女の名は柚木加菜子。偶然現場に居合わせた警視庁刑事・木場修太郎が取り調べをしていると、そこへ元女優の美波絹子が現れる。絹子は実の娘である加菜子を強引に名外科医・美馬坂幸四郎のいる「美馬坂近代医学研究所」へと転院させた。そこは戦時中に人体実験がされていたという噂がある、巨大で四角い異様な建物だった。一方、バラバラ遺体が連続して見つかるという事件の取材を行う雑誌記者の鳥口と小説家の関口はとある古本屋を訪れる。古本屋の主の名は中禅寺秋彦。家業は武蔵晴明神社の宮司にして陰陽師。“憑き物落とし”を副業とし、「この世には不思議な事など何ひとつない」が口癖の男だ。鳥口から一連の話を聞いた京極堂は、事件解明の協力を約束する。