55:15 Never Too Late

「君たちも…そうなの？」 高校の昼休み、学内放送のMC役、パンポンドが同級生のリクエストを受けて流したのは、今どきの学生は誰も知らない40年も前のヒット曲。その歌を口ずさむ4人の学生を見て思わず声を掛けたサン。同い歳に見えるサンは、実はある朝目を覚ますと15歳の姿に変わってしまった元55歳の失業中の声優だ。大昔のヒット曲が歌える彼らも、きっと自分たちと同じに違いない。驚いて互いにソンと目を合わせるソンポン、ジェーヤー、ジャルニー、アモンテープ。彼らもまた、サンと同じく、目が覚めたら15歳の自分になってしまった元55歳の中年男女だったのだ…。自分たちに一体何が起きたのか？そしてその原因は？ 集まった5人は互いに起きたことを1人ずつ話し始める…。

業界の先駆者として声優のキャリアを築いてきたサン。事務所の後輩コンと一緒に日々収録と飲み会に明け暮れている。機転が利き女性の扱いが上手いサンはモテモテだが、今までに一度も真剣に女性と交際をしたことがない。それは、初恋の相手であるプリムのことが忘れられないからだ。彼女と離れるとき、成功して迎えに行くと誓ったサンだったが、自信がなくて実現できていない。酒はその諦めを慰めるためだったが、商売道具の喉を潰す羽目に。咳が止まらず仕事にならないサンは、ついに社長から解雇宣告をされてしまう…。

家業である飲食店を営むソンポンは、創業者の母親と次男ジョムの家族と一緒に暮らしている。後継ぎはおろか恋人すらいないソンポンに、「世間に変な噂がたつ」と高齢で保守的な母親の愚痴は絶えない。忙しくて結婚どころでないと弁明するが、本当の理由は、店の専属ピアニストで子持ちのバツイチ男、メティーに何十年も片思いをしているからだ。しかし、理解のなかった母の突然の死をきっかけに、カミングアウトをする決意する。同居する姪、ノイネーの励ましと助けを借りながら、自分らしい人生を歩み始めるソンポン。しかしその先に、思わぬ展開が待ち受けていた…。

かつての国民的アイドル、ジェーヤーの55歳の誕生日。まだ現役だが、マネージャーのパオが持って来る地味な仕事が気に入らない。肝心の歌の練習にも消極的で、自堕落な生活を送っている。お祝いに来たパオが、所属レーベルの高校生ラッパー、グレターが自分の代表曲を自分に無断でラップにして歌っているのをネットで見つける。しかも人気急上昇中と知り憤怒。翌日、会社に乗り込み社長に抗議をするジェーヤー。しかし、努力もせず人を侮辱する態度が社長の怒りを買い、次の仕事が契約継続の最後の機会だと言い渡される。心配するパオの見守るなか、再起をかけたラストステージに立つのだが…。

順風満帆に思える教師人生を送ってきたジャルニーだったが、度を越えた生徒指導事件をきっかけに大きな転機を迎える。保護者の苦情が寄せられた学校から戒告処分を受け、不満を募らせる生徒たちから一斉に拒絶される。体調を崩し検査を受けた病院では、末期の子宮頸がんだと告げられてしまう…。落ち込む彼女を支えようとする隣人の青年ボムの優しさにも応えられない。周囲の期待に応えることが自分の生きる使命だと信じてきたが、その自信を打ち砕かれ、がんで将来まで閉ざされたジャルニー。絶望した彼女は自ら命を絶とうと睡眠薬を手にする…。

試合に敗退し、当てにした賞金を逃したことで、窮地に陥るアカデミーの経営。アモンテープは門下生の給与も出せなくなり、わずか数名を残してみな離れてしまう。息子のパンポンドは再建に向けた様々なアイディアを試行錯誤するが、保守的で懐疑的なアモンテープと合理的で楽観的なパンポンドがぶつかり益々険悪なムードになる。そんな中、住居を兼ねるアカデミーの施設の契約更新が間近に迫る。これにも多額の更新料が必要だ。アモンテープは、起死回生の金策を講じなければ、全てを失う絶体絶命のピンチに直面する…。