吉田一郎 (伊藤雄之助) が十五年ぶりに中国から戻った時、妻マチ子 (淡島千景) は鎌倉彫の手内職で息子清 (設楽幸嗣) と細々暮らしていた。博古堂の女経営者松本雪子 (田中絹代) は隣家のよしみ以上に何かと好意を示していたが、雪子の養女春子 (安村まさ子) と清は大の仲良し。一郎は以前の勤務先南陽商事に戻り、かつて後輩だった課長秋月 (多々良純) の下で、戦前とまるで変わった仕事内容を覚えようと必死。清は甘えたくも取りつくしまがない。一年が過ぎ、吉田家には赤ん坊が生まれ光子と名付けられたが、清は一郎の愛情が移ったのに不満。小動物小昆虫の飼育で僅かにウップンを晴らすが、一郎にそれまで叱られる。ある日、清らは上級生と喧嘩の現場を担任の靖子先生 (久我美子) にみつかる。