エピソード1
ヤドカリと麦わら帽子
幼い頃、生け簀いっぱいに捕まえた、たくさんのヤドカリ。ヤドカリを蟹だと思って"ヤドカニ"と呼ぶ七海は、「"ヤドカニ"がかわいそう」だと言って全部逃がしてしまった。それが、健次と七海、ふたりの最初の出会いだった……。 友坂健次と近衛七海は、小さい頃から家がお隣同士の幼馴染。今ではふたりも高校生となり。この日も妹の鈴夏に起こされても目を覚まさなかった健次が、寝坊しているであろう隣の家の七海を起こしに訪ねて行く。それもベランダをつたって窓から部屋へ。今日もそんな仲の良いふたりの日常生活が繰り広げられていた。 登校途中の海岸通りで、海へと続く小道を降りて行く健次と七海。ここは学校への近道となる通り道。夏の暑い陽差しがふたりに注ぐ。学校では、お掃除好きの先輩・石和多恵が、世話焼きのようにふたりに声をかける。そんな光景をクスリと笑うクラスメイトの佐倉裕美。 この日は1学期の期末試験。これが終わればいよいよ夏休みがやってくる。放課後、ふたりは七海の母や経営する喫茶店でお昼ごはんのひとときを過ごす。出されたのは野菜タップリのミートソースパスタ。そのとき、かつて健次と七海がふたりで野菜を取りに行ったこの日の出来事が思い出される……。
25分 · 2005年1月1日