京都寺町三条にある骨董品店『蔵』。まるでレトロなカフェの様な佇まいのこの店に、真城葵は祖父の形見の掛け軸を手に訪れる。そこにいたのは、類い希なる観察眼と恐ろしい推理力で「寺町のホームズ」の異名を誇る家頭清貴。清貴は葵に問いかける――「……葵さん。もしよかったら、ここで働きませんか?」
怪文書が届いたんやて――。五月に行われる葵祭の主役、斎王代を務める宮下佐織の元に二通の怪文書が届いた。佐織は妹の香織と母と『蔵』を訪れる。事態の解決を頼まれる清貴。葵と共に調査に乗り出す。いけずな清貴に振り回される葵。清貴は意外な犯人とその理由に辿り着く。「……斎王代になるのって嬉しくないんですか?」
煌々と燃える焼却炉の炎。三本の掛け軸が勢いよく燃え上がり灰と火の粉を舞い上がらせる。7月初旬。父、武史に頼まれ梶原家の山荘を訪れる清貴と葵。武史の作家仲間、梶原直孝が三人の息子に残した掛け軸。その掛け軸は何者かに焼かれていた。そこに描かれていた絵に込められた驚愕の真実。「……聞かなければよかったと、思うかもしれませんよ」
7月中旬。祇園祭を間近に控えたある日、清貴のかつての恋人和泉が『蔵』に姿を見せる。和泉は自らが作った茶碗の鑑定を清貴に頼む。そこに清貴だけが分かる想いを乗せて。葵が埼玉に住んでいた頃の友達が修学旅行で京都を訪れる。かつての恋人と親友と共に。はらはらと揺れるこの気持ち。「さすがですね……ホームズさん」
秋。副住職から南禅寺に呼ばれている清貴。番組の取材で南禅寺に行きたい秋人。妖怪が出たことで知られる寺に二人連れだって向かう。――龍を頂戴いたしました。そう書かれていた手紙の相談を受ける清貴。精巧な偽物を作る贋作師と、偽物を見破る鑑定士。二人の因縁がここに結ばれる。「どんな贋作が出てきても、叩き斬ってやるまでです」
秋。家頭誠司の喜寿を祝う誕生日パーティーが開かれる。華やかな衣装に身を包み、パーティーを堪能する葵。招待される各界の著名人。その中には誠司に恨みを持つ者もいた。狙われた青磁の壺。誠司が大事にしている美術品の一つ。だが、真の狙いは鑑定士のプライドそのもの――。「……いいえ、怖くなんてないです」
石川界人
Kiyotaka Yagashira
富田美憂
Aoi Mashiro
遊佐浩二
Ensho
小山力也
Seiji Yagashira
木村良平
Akihito Kajiwara