最初にお届けするのは「怪談」の中でも良く知られる「耳なし芳一」。盲目の琵琶法師・芳一が夜ごと平家物語の弾き語りに招かれる。しかし、そこに集まっていたのは、壇ノ浦の合戦で敗れた平家の亡霊たちだった。

東京赤坂にある紀伊国坂は、かつて人々が日暮れ後に近づきたがらない場所だった。 その理由は夜ごとあらわれる不思議なもの。ある晩、年老いた商人が、しゃがみこんで泣いている娘を見つけ、声をかけるが・・・

松江藩にある小さな飴屋に、毎夜、白装束の若い女が現れ、母乳の代わりに赤子に与えるための水飴を買っていく。やせ細り青ざめた顔の女のことがどうしても気になった店主がそっと後をつけると…

愛した男に裏切られ、憎しみを胸に亡くなった女。しかし不思議なことに、女のからだは旅から男が帰ってくるのを待っているかのように、死の気配を漂わせていなかった。話を聞き恐怖にとらわれた男は、陰陽師に助けを求めた。

東北地方に暮らす猟師が、ある日、獲物に恵まれぬままたどり着いた水辺で鴛鴦（おしどり）を見つけた。仲良く寄り添うつがいを撃つのはためらわれたが、空腹に負けた猟師は矢を放ち、会心の一撃で雄の鴛鴦をつらぬいた。その夜猟師は、霧に包まれた水辺に立つ美しい女の夢を見る・・・

松江藩松平家の菩提寺である月照寺。亀を愛でていた藩主を偲んで大亀の石像をつくった。ところが、この大亀が夜になると城下で暴れ人を食らうようになった。困り果てた住職が深夜、その大亀に説法をすると、大亀は涙を流して住職にこう頼んだという。「わたしにもこの奇行を止められません。貴方にお任せいたします」。そこで亡くなった藩主の功績を石碑に彫り込み、その石碑を大亀の背中に背負わせてこの地に封じ込めた。