一つの街角に存在し交錯する物や生物、それぞれのドラマが戦火に包まれ悲劇的な結末を迎える「ある街角の物語」(1962年)から、手塚自身の顔がスロットマシンのように次々と別の顔に変容していく「自画像」(1988年)など、短編全13話。
エピソード1
ある街角の物語
街角に貼られたポスターと、クマのぬいぐるみを友達にしている女の子、さらに街灯やその光に誘われる一匹のイタズラな蛾。そんなひとつの街角に存在する生物、無生物のそれぞれのドラマを交錯させながら、そのすべてが戦火に巻き込まれて悲劇的なクライマックスを迎える、という「ストーリー」ではなく「感情」をこそ語るプライベート・アニメーションです [ショート]
エピソード2
おす
飼い主である女性とゆっくり過ごそうと思っていた猫。だが、ベッドの上で足をバタバタさせている彼女を殺してしまった男は、警察の到着を待っていた。猫の目を通して語られる男女の難しさとは…。
エピソード3
めもりい
思い出の不思議、記憶の曖昧さ、そして現実を美化してくれる思い出というものの功罪…。それらは、やがては人類破滅の末に地球そのものが宇宙の思い出となってしまう。戦争に対する批判も込めた作品。
エピソード4
人魚
ある日、砂浜に打ち上げられたサカナを拾い水たまりに放した少年。するとサカナは美しい人魚に変わってしまう。少年は警察に連れていかれ取り調べを受けることに。空想が許されていな遠い国の、空想好きな少年の話。
エピソード5
しずく
大海原をイカダで漂流する男は飢えと乾きと幻覚に悩まされ、いまや極限状態だった。マストに光る3滴のしずくを見つけた男は、しずくの水を飲みたい一心で、何度もも涙ぐましい努力を繰り返すが…。
エピソード6
展覧会の絵
友人である建築家・ハルトマンの遺作展を訪れた時に、出品された絵のひとつひとつから受けた印象をムソルグスキーが10の小曲にまとめた組曲「展覧会の絵」を、アニメーションにした10エピソード。
山本暎一
手塚治虫