いづれの御時にか——。平安時代の宮廷に、「光る君」と称され、人々に愛された御子がいた。帝の第二皇子でありながら、臣下として源氏姓を受けた光源氏その人である。源氏9歳の頃、亡き母・桐壺の更衣の面影を持つという藤壺の女御が、帝の新たな妻として後宮に入内する。5歳年上の美しい少女に、源氏は運命を予感する。だが、間もなく源氏は元服することになり、宮中のしきたりによって、藤壺と会うことは叶わなくなってしまう。
幼い日の恋心は秘められたまま、17歳となった光源氏。気位の高い妻・葵の上と心すれ違う日々の中、葵の兄で親友である頭の中将から、当代一の貴婦人と呼ばれる六条の御息所の噂を聞く。源氏は嵐の中を六条へと向かい、学問の教えを請う。御簾ごしに交わす緊張感あるやりとり、その手ごたえと高貴さに圧倒され、たびたび通うようになる。同じように六条の御息所もまた、我知らず強く源氏に惹かれ、その訪れを待ちわびる・・・・・・。
光源氏は、六条の御息所との逢瀬を重ねる毎に、その美しさ、情の深さに溺れていく。しかし同時に重くも感じるようになっていた。そんな時、町の白い夕顔の咲く家に住む女性と文を交わしたことから、新しい恋がはじまる。自分の名も明かさず、源氏の名も知りたがらない、ただ逢える事が幸せと言うその女性に源氏は癒され、「夕顔」と呼んで愛しむ。だがそんな幸せも、長くは続かなかった。
夕顔を失った光源氏は、心身の病で内裏への出仕も出来なくなる。父・桐壺帝は源氏の長患いを案じ、見舞いを送るよう藤壺の女御に促す。藤壺からの見舞いに付けられていたささやかな手紙に、かつて封印した想いが甦る源氏。ようやく快方の兆しが見えた頃、源氏は北山の寺へ祈祷を受けに行くことに。そこで、藤壺に生き写しの幼い少女に出会い、ますます想い人への心が強くなる。やがて都に戻り、出仕を明日に控えた夜――。
禁忌を犯し、父帝の妻である藤壺と想いを遂げた光源氏。罪を背負って愛し続ける決意をする源氏だが、藤壺はこれ以上の罪を重ねまいと拒む。二人の恋は誰にも知られぬまま消えるはずだった。しかし、天の定めた宿命は過酷なものだった。藤壺の懐妊――。何も知らない帝は喜び、藤壺をいたわる。実家に宿下がりした藤壺と密かに再会した源氏だが、藤壺から最後の別れを言い渡される。
生まれた若宮は光源氏に生き写しだった。帝は、若宮を次の春宮とし、源氏にその後見人を命ずる。それはいずれ若宮が帝となり、源氏が最高位に立つ事を意味していた。臣下に下った身でありながら、思いがけず開かれた出世の道。だが後にそれを阻むきっかけとなる妖しい出会いが訪れる。朧月の夜、源氏のもとへ扇を落とした、明るく奔放な姫君との幻のようなひととき・・・・・・。姫君は、政敵である右大臣家の六の君だったのだ。
櫻井孝宏
Hikaru Genji
藤田淑子
Lady Kokiden
遠藤綾
Murasaki No Ue
玉川砂記子
Lady Fujitsubo
堀内賢雄
Emperor Kiritsubo