大正9年、東京の女子大に通う戸倉彩(松嶋菜々子)が故郷の山形に里帰りした。彩は地元の大地主の一人娘で、両親の加護のもと、何不自由なく暮らしていた。ある日、彩は間違って自転車ごと川に落ちてしまった。たまたま傍らにいた八代公太(原田龍二)は怪我をしてずぶ濡れになった彩を家まで連れて帰った。公太は戸倉家の土地を借りて細々と生計を立てている小作の倅だった。公太は絵書きを志していたが、極貧のため絵の具も買えない。そんな事情を知った彩は公太に東京で働くことを勧めた。二の足を踏む公太を意気地なし呼ばわりした彩。その言葉だけを頼りに、公太は母親・きぬ(泉ピン子)の猛反対を押し切って単身上京した。東京の小さな株屋で丁稚奉公を始めた公太だが、その頃、彩には、縁談が持ち上がっていた。相手は大戦の軍需景気で百万長者にのしあがった横山平吉(山口祐一郎)。事業に失敗した彩の父・直道(林隆三)の莫大な借金を肩代わりする条件として、平吉は彩との結婚を望んだのだった。最初は見も知らぬ平吉との縁談を拒んでいた彩だったが、戸倉家の危機を母親の史(黒木瞳)から聞かされ、自ら横山家に嫁ぐ決心をする…。