エピソード1
Once Upon a Time in Queens
1986年のメッツが成し遂げたおとぎ話のような快挙を真に理解するには、時間を遡らなければならない。ムーキーが一塁へゴロを転がすよりも、そして球団が信じがたく忘れられない形で幕を閉じる、球史に残る圧倒的なシーズンを築き上げるよりも、ずっと前に。遡るべきは、約10年前の1977年夏。ニューヨーク市とクイーンズを本拠地とするこの球団が、共にどん底にあった悪名高き大停電の時代だ。 当時メッツは創設15年目。愛すべき負け犬球団として始まり、1969年には奇跡のチームとして優勝を飾ったが、その後は見るに堪えない笑いものへと成り下がっていた。70年代後半のチームの惨状は、疲弊し、破産し、犯罪が蔓延するニューヨーク市の姿を映し出すかのようだった。 しかし、事態は好転し始める。1980年代はニューヨークの時代だった。好景気が、興奮と予測不能性、そして鋭さを持つ街の再生を後押ししたのだ。やがてメッツもその流れに乗る。新オーナーはGMにフランク・キャッシェンを迎え、彼はダリル・ストロベリーやドワイト・グッデンといった期待の若手スターと、キース・ヘルナンデスやゲイリー・カーターのようなベテランオールスター選手を融合させ、優勝を狙えるチーム作りを開始した。 彼らの周りには個性豊かな選手たちが集結し、1984年、大胆不敵な監督デイビー・ジョンソンの下でメッツは突如として再び優勝候補に躍り出る。1985年に地区優勝まであと一歩と迫ったこの向こう見ずな才能の集団は、活気を取り戻した街で、スポーツ界最高の物語を紡ぎ出す一触即発の火種となっていた。