The Captain

1992年の春、17歳のデレク・ジーターが大好きなヤンキースにドラフト指名されたとき、それはまるでおとぎ話の始まりのようだった。しかしそれはまた、白人の母と黒人の父の間に生まれた彼にとっては長い物語の一部に過ぎなかった。1995年にメジャーリーグに辿り着くまでの数年間に鍛えられ、メジャーリーグでもさらに多くの試練が待っていたのである。

1996年、野球のシーズンが始まったとき、ブロンクスに王朝が誕生すると予想した人はほとんどいなかっただろう。この年、ルーキーの遊撃手と新監督によってヤンキースの野球、そして野球の歴史は新たな時代を迎える。デレク・ジーターは、初日から大リーグで通用すると期待された類いまれなルーキーであった。彼は15年ぶりに地区優勝を果たしたチームの中心選手として、頭角を現す。

世界の頂点に立つ者の人生は素晴らしいが厄介な問題も起こる。21世紀に入り、ヤンキース王朝が絶頂期を迎えた頃、デレク・ジーターは成功の中で時折混乱に見舞われた。1999年、2000年とヤンキース王朝が続く中、全盛期を迎えていたジーターは打率、安打数、得点でトップの座に君臨するタフな選手であった。1999年、ヤンキースはアトランタ・ブレーブスを破りワールドシリーズを制覇する。

2001年９月11日の早朝、ニューヨークではすべてがうまくいっていた。その日はとてもいい天気で、デレク・ジーター率いるヤンキースは、アメリカンリーグ東地区で13ゲーム差をつけて首位に立っており、圧倒的な強さを見せていた。10月、ポストシーズン、そしてワールドシリーズへの挑戦と勝利は目前だった。しかし、その時、すべてが変わった。9/11テロは決して忘れることはない。

栄光がある一方で、デレク・ジーターが忘れたいと思う瞬間もある。2004年のチャンピオンシップでは、レッドソックスが０勝３敗の劣勢から前代未聞の逆転劇でヤンキースを破り、ついにワールドシリーズ制覇を成し遂げた。この崩壊の理由は１つだけではなく、今にして思えば、それはヤンキースで起こったさまざまな変化の象徴であり、ワールドシリーズ王朝のメンバーたちの転換期であった。

2008年９月、ヤンキースが旧ヤンキースタジアムで最後の試合を行い、翌年の春に新球場がオープンすることが決まり、ひとつの時代が終わった。これまでと同様、デレク・ジーターはこの日のために観客に心のこもったスピーチをした。素晴らしい歴史を祝う夜だったが、人々の心をよぎるのは別のことだった。ジーターがポストシーズンに出場しないのは、彼のキャリアで初めてだったのである。