この嫁入りは黄泉への誘いか、奇跡の幸運か――名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と異母妹に虐げられて育った。嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞(きよか)。数多の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく――。
エピソード1
出会い
斎森家の長女・美世は、異母妹・香耶が、父・真一と継母・香乃子に愛情深く育てられる一方で、ないがしろにされ、使用人同然の生活を送っている。やすらぎをくれるのは、心優しい辰石家の次男・幸次だけだった。だが、父は香耶の夫として幸次を婿養子に迎える。そして美世には、冷酷無慈悲と噂される軍人の久堂清霞のもとへ嫁ぐよう命じて……。
エピソード2
旦那さまという御方
「私が出て行けと言ったら、出て行け。死ねと言ったら、死ね」。そんな恐ろしい言葉とともに、清霞との生活が始まる。帰る場所のない美世は、自分が異能を持たない役たたずだと知られるわけにはいかなかった。しかし、どうにか役に立とうと、使用人のゆり江よりも早く起きて朝食を用意するも「毒を盛ったのだろう」と疑われてしまい……。
エピソード3
初めてのデヱト
突然訪れた、初めての“デヱト”。清霞は「何も欲しいものがない」という美世に、自分の買い物に付き合うように言う。これまで家を出ることがなかった美世にとって、街は新鮮な驚きに満ちていた。その頃、斉森家では辰石実が真一に約束を反故にされた怒りをぶつけていた。「斎森美世を手にいれるのは、我が辰石家だ」と……。
エピソード4
おくりもの
清霞にお礼がしたいと考えた美世は、ゆり江に相談し、手作りの組み紐を贈ることにする。清霞は、買い物へ行きたいという美世にお守りを渡し、送り出す。だが、美世は街でゆり江を待つあいだに香耶と幸次に出くわしてしまう。その頃、情報屋から美世の生い立ちを知らされた清霞が斎森家を訪れ、実と香乃子を詰め寄るも、2人は悪びれる様子もなく……。
エピソード5
波紋
美世は、花との再会を手助けしてくれた清霞の部下・五道をもてなす準備に精を出す。だが、その幸せそうな様子を覗き見る者たちがいた。怒りに震えるのは、美世の実母を憎んでいた香乃子のもと、常に姉より〝上〟でいるようにとしつけられてきた香耶。辰石実は、そんな香耶を利用して美世を手に入れようと目論み……。
エピソード6
決意と雷鳴
美世が目を覚ますと、そこは幼い頃に閉じ込められたあの真っ暗な蔵の中だった。香乃子と香耶は、美世を執拗に痛めつけながら「自分から縁談を断れ」と迫る。これまでの自分なら、抗うことなく従っていただろう。でも、今は違う。清霞は幸次から美世の居場所を教えられ、斎森の屋敷へと乗り込むが、実と真一が異能で立ちふさがり……。
上田麗奈
石川界人
佐倉綾音
西山宏太朗
下野紘
桑島法子
久保田雄大
大西雄仁