北の町、函館。朝市を駆け抜けていく娘、彼女の名前は茜木温子。市場の人たちに明るく挨拶を返しながら、忙しげに働いている温子は、トロ箱を抱えたままつまづいて、イカをぶちまけてしまったりと少々ドジなところも…。夕暮れ時、「茜木鮮魚店」の店先に立っている温子の前にふと現れた常連客・倉田。倉田からジャズのCDを手渡され、嬉しさを隠せない温子に、「妙な噂が流れたら困るだろ」と母親の早苗が横から口を出す。その時一本の電話が。老舗旅館・神宮司からの配達の注文だ。配達に向かった温子を待っていたのは、神宮司の御曹司、実だった。
母・早苗と口論の末、温子は土砂降りの中、家を飛び出して行った。倉田が部屋で独りジャズを聴いていると、突然、チャイムの音が鳴る。玄関のドアを開けると、そこには、ずぶぬれになった温子の姿が。倉田の胸に飛び込み、泣き崩れてしまう温子。倉田のマンションで風呂につかる温子の頭に、母親の声が響く…。「世の中、好きってだけじゃどうしようもない事だってあるんだよ…」風呂から出た温子に、倉田は缶ビールを手渡す。温子は倉田に自分の素直な胸のうちを話し始めた…。
北見の病院で入院中の少女、白石果鈴。果鈴は自然気胸を患い、外出もままならない。そんな果鈴の唯一の楽しみは、自身のHP「果鈴の夢の図書館」で自作の童話を発表することだった。ある日、担当医の根本が新任研修医の甘粕を連れてやってくる。その時、手術を頑なに拒む果鈴に対して、甘粕はそれは甘えだと厳しく言い放つ。落ち込んでしまっていた果鈴の元に、一通のメールが届く。それは果鈴のHPのファンからのメールであった。果鈴の知らない外の世界を教えてくれるそのメールは彼女の心を躍らせ、やがて果鈴は彼からのメールを心待ちにするようになる。
果鈴は「あなたのファン」からの写真と同じものを甘粕の机で見つける。「あなたのファン」は甘粕だと確信した彼女は、診察に入ってきた彼を意識して、真っ赤になりうつむいてしまう。引き続き届く「あなたのファン」からの励ましのメールを読んで、笑顔になる果鈴。しかし、ふと何かを思い出してうつむく。「手術か…。」とつぶやく彼女の心に浮かんだのは、幼いころに亡くした父親のことだった。その時、甘粕を窓の外に見かけた彼女は、彼を追って一人車椅子で外に向う。甘粕の姿を見つけ、近づこうとすると、甘粕は一人ではなく…。愕然とする果鈴は、再び発作を起こしてしまう。
大学のシネマ研究会に所属する朝比奈京子。どうしても賞を取らなければいけないと感じている京子はそのプレッシャーからか、回りが見えなくなってしまっており、他の部員との溝は深まるばかりだった。そんな京子を暖かく見守る青年、ユウ。煮詰まってしまっている彼女を元気づけようと自転車で彼女を連れ出すのだが…。
撮影したシーンを確認しようとした京子は、何も写っていないモニターを見て愕然とする。「何これ…」呆然とする京子。無言のユウ。モニターを見つめていた京子は、そのまま崩れ落ちてしまった…。翌日―。シネマ研究会部室。ビデオが録画されていなかったことを、皆に詰問する京子。しらばくれる美希やスタッフ。部室を出た京子を追いかけてきた部長に、京子はシネマ研究会を辞めることを伝えた。帰りの電車内。あと一ヶ月に迫った映画祭の書類を見つめる京子。自宅に戻った京子は、ユウに撮影助手を頼んだ。一人で映画を撮ることにした京子。それを見守るユウの目は心配そうに曇っていた…。