カフェ開業を夢見るOL春野藤 (26) は、ノスタルジックで可愛らしい「乙女建築」巡りを趣味とする中年の建築模型士、植草千明 (55) とSNSで出会う。そして名建築を巡っていくうちに、千明の一風変わった価値観やものの捉え方や視点に興味を抱いていく。起業を準備している友人綾子との意見の食い違い、気の遣いすぎで疲弊していた藤の心が千明の何気無い言葉から、物事を捉える視点と共にゆっくりと変わってゆく…。
エピソード1
アンスティチュ・フランセ東京
春野藤 (池田エライザ) は、「乙女建築」なる写真をSNSでアップしている植草千明 (田口トモロヲ) とメッセージを交わす中、一緒に名建築でランチをすることに。訪れたのは、1952年にフランス語学校として設立されたアンスティチュ・フランセ東京。設計したのはル・コルビュジェに師事した日本モダニズム建築の第一人者、坂倉準三。トリコロールカラーの色使い、アートに囲まれた教室、世界に2つのみと言われる2重構造のらせん階段を目の当たりにし、感銘を受けた藤は次第に「乙女建築」に惹かれていく。そして、友人綾子 (小川紗良) とカフェ開業に向けて話し合い、決意を強めるのであった。
エピソード2
自由学園明日館
藤 (池田エライザ) が元カレから預けられたぬか床を悶々とした気持ちで混ぜていると千明 (田口トモロヲ) から「女子校でランチしませんか?」とのお誘いが…。向かったのは世界的建築家フランク・ロイド・ライトが設計した自由学園明日館。ステンドグラスを使わずに幾何学的な窓枠や桟でそのイメージを表現したホール、建物との調和を考えた六角形の家具など、100年前に建てられた女子校の中に数々の「乙女建築」を発見する。増築された講堂など「名建築の時代を経ての変化」を目の当たりにし、自分も変わらなければと感じた藤。元カレで悩んでいたが、少しずつ前向きな気持ちに…。
エピソード3
現存する日本最古のビヤホール
カフェの開業に向け自宅でカレーの試作品を作っている藤 (池田エライザ) と綾子 (小川紗良)。そこに千明 (田口トモロヲ) から「麦畑でランチしませんか?」とメールが…。向かったのは現存する日本最古のビヤホール・銀座ライオン。装飾のコンセプトは『豊穣と収穫』。麦の穂を現した柱、ビールの泡をモチーフにした白くて丸い照明、開店当時からのレトロなタイル…「乙女建築」に触れ盛り上がる藤と千明。ランチには名物の牛煮込みとビーフカレーを頂く。そこで仕事の話になり、今の仕事をあまり楽しめていない事、つい友人と自分を比べてしまう事など、藤は抱えていた悩みを千明に打ち明ける。
エピソード4
東京都庭園美術館
藤 (池田エライザ) は会社帰りに偶然、千明 (田口トモロヲ) が若い男と肩を寄せあい楽しそうにしている姿に遭遇する。2人の関係が気になる藤に千明からランチの誘いが…向かったのは、もとは宮家の邸宅として建てられた東京都庭園美術館。朝香宮夫妻は、パリで生活した経験があり、壁飾りから家具、照明にいたるまで、当時最新のフランスの建築様式、アール・デコで統一されている。二人のパリでの記憶が詰まったこだわりの邸宅だが、妃殿下は住み始めてわずか5ヶ月で亡くなったという…。ランチの後、意を決して若い男の存在について聞いてみると、想像だにしなかった千明のプライベートが明らかに…。
エピソード5
目黒区総合庁舎
千明 (田口トモロヲ) が行きつけの喫茶店でマスター (三上寛) と談笑していると、藤 (池田エライザ) から名建築巡りの誘いの連絡が。今回の行き先は、目黒区総合庁舎。まず目に入ってきたのは、格子状のアルミ鋳物で建物の全面を覆った圧巻の外観。そして、中へ入ると現れるのが階段の名手・村野藤吾の傑作と名高い螺旋階段。あたかも宙に浮いたかのような浮遊感をもたらすレトロフューチャーなデザインに感心する藤。ランチは屋上庭園で千明が買ってきた愛知発祥のダイワのフルーツサンドを頂く。そこで藤は仕事を辞めようと思っていることを打ち明ける。
エピソード6
国際文化会館
藤 (池田エライザ) が休日に西荻窪を散策していると犬に吠えられている千明 (田口トモロヲ) に遭遇する。後を付けてみるとそこは千明行きつけの喫茶店だった。ランチに誘われ向かった先は六本木。緑豊かな3000坪の敷地に佇む国際文化会館。日本近代建築の3大巨匠、前川國男、坂倉準三、吉村順三によって設計された。庭師・小川治兵衛の傑作として名高い日本庭園があり、その庭園を望むように大谷石、障子、木製のサッシなど日本的要素を取り入れ建てられたモダン建築だ。昼食でフレンチを頂きながら、千明独自の「幸せの見つけ方」に触れた藤はぶつかってばかりいた綾子に謝る決意をする。
池田エライザ
田口トモロヲ
小川紗良
三上寛
清水啓太郎