
月に行く舟
1990年代に日本のドラマ界を席巻し、今も時代の先端を走り続ける脚本家・北川悦吏子が描く、大人の恋物語。 主人公は盲目の美しい女・水沢理生。行き交う電車に乗り込むことはなく、駅のホームに佇む理生。そして、仕事を終え東京に戻るため駅にやってきた男・涼太。些細な偶然から出会う2人。互いにどこか孤独を抱えた2人は惹かれ合う。電車を待つ短い時間に繰り広げられる、切ない恋物語。穏やかに描かれる2人と対照的なのが、涼太の仕事相手である大御所作家・佐々波慶太郎とその妻・千夏。幾多の危機を乗り越えてきた老夫婦の会話からは、共に生きる相手がいる、ということの意味を考えさせられる。(CBC製作) 【ストーリー】 岐阜の山間の小さな駅に佇む水沢理生(和久井映見)。電車が行ってしまってもそのままホームのベンチに座り続けていた。その駅にやってきた篠崎涼太(谷原章介)。涼太はこの町に住む大御所作家・佐々波慶太郎(橋爪功)から新刊雑誌に連載するエッセイの原稿を受け取り、東京へ帰るところだ。待合室で理生を見かけた涼太は、近くに喫茶店がないかと尋ねる。そのとき白杖が目に入り、彼女の眼が見えないことを知る。教えられた喫茶店が閉店していたため、駅に戻った涼太は、まだ待合室にいた理生と他愛もない会話を交わし始める。やがて涼太が乗る電車の時間が近づき、2人は別れを告げる。すると理生は風に揺れる小さな音に気付き、涼太がいるであろう方向に向かって忘れ物があることを懸命に叫ぶのだった。ありがたく受け取ったものの、結局涼太は電車に乗れず、空腹もピークに。そこで涼太は、お礼も兼ねて理生を食事に誘う。こうして初めて出会った2人のささやかなデートが始まった。 やがて、女は、どこかに行くために駅にいたのではないと男に告白する。あそこで、ある人を待っていたのだと…。