エピソード1
命を懸けた恋が今始まる・・・エイズウイルス感染の告知
「啓吾!啓吾!」。熱狂的なコールを浴びても、人生に満たされないものを感じる啓吾(金城武)は無感動だった。 サラリーマンや若者、ルーズソックスの女子高生らが行き交う東京・渋谷の街。トイレで着替え、化粧する女子高生らのなかに真生(深田恭子)がいた。真生は、そんな周囲に最近ついて行けなさを感じてもいた。 真生にとって啓吾はカリスマ的存在だった。その啓吾がプロデュースする歌手・カヲル(仲間由紀恵)のCDをCDショップで見つけた真生は、視聴用CDをちょっとイイ仲のイサム(加藤晴彦)に聞かせる。 その頃、啓吾はコンサートのリハーサル中だった。気に入らない演奏をしたギタリストを怒鳴りつけ、啓吾はワンマンそのもの。だが、啓吾は心の空しさを埋めるため、傲慢に振る舞っていた。 真生は啓吾のコンサートチケットを買う。しかし、財布ごと電話ボックスに置き忘れ、どうしてもコンサートに行きたい真生は、友達の麻美(矢沢心)と相談。ダフ屋から買うには5万円ぐらい必要と、H無しの援助交際で金を稼ごうとする。 危険な目にも遭いやっと見つけたカモの青年。青年は喫茶店で粘った挙句、約束の金を払おうとせず、真生は“サイテーな奴”と憤然とするが、「石川啓吾の曲が好き」と青年から聞き、二人はラブホテルへ───。ベッドに置かれた5万円。真生の心に空しさが広がった。実は、チケットはイサムが拾っていたのだった。 真生の家族は、家族にはすっかり諦めきった父親義郎(平田満)に、母の弥栄子(田中好子)、中学受験を目指す弟の悟(佐々木和徳)。 翌日、真生は啓吾のコンサートに行き、ファンの渦の中にいた。援助交際の空しさを吹き飛ばそうとカヲルが歌う啓吾の曲に酔う真生だが、啓吾は「この中にホントに歌を聞いているヤツが何人いる」と、客席の熱狂を感じながら冷たく言い放つ。啓吾はコンサートが終わったカヲルを怒鳴りつける。カヲルが歌詞を違えて歌ったためだった。 帰宅しようと真生と麻美が乗ったタクシーが、啓吾のワゴン車に出くわした。真生はタクシーを降り、雨の中、啓吾のワゴン車を必死に追った。信号待ちのワゴン車に追いた真生は「I LOVE KEIGO」の布を歩道橋の上で高々とかざす。そんな必死の表情の真生と啓吾の視線が絡んだ。 一人とぼとぼと帰る真生の前に、ワゴン車で走り去ったはずの啓吾が突然現れた。信じられない真生。どちらが誘い、誘われるという風もなく真生は啓吾の部屋へ。啓吾の前で逆立ちするなど、あどけなく振る舞う真生から戸惑うように目をそらす啓吾。そんな啓吾を真生は、母のように抱き締め、啓吾にとって真生は忘れられない存在になった。一方、真生にとっても啓吾との出会いは人生を一変させた。 そして3か月、二人を待っていた現実は、HIV感染という事実だった。
58分 · 1998年7月7日