私、松前緒花の平凡な日常はドラマチックな展開を迎えたのです。通い慣れた、それでいてあまり愛着のない街を出て、話したことや会ったこともない祖母の元で暮らすのです。大正浪漫あふれる温泉旅館、喜翆荘。花の芽が地上に出て新たな世界を知るように、私も、今までとはまったく違う、新しい生活を始めます。めげても、くじけても、泣きじゃくっても明日は来るんです。だからこそ私は頑張りたいんです、そして輝きたいんです。太陽に導かれるよう咲く花のようにいつか大輪の花を咲かせられるように…。
エピソード1
十六歳、春、まだつぼみ
突然、母、皐月から「夜逃げをすることになった」と伝えられた松前緒花。母親から手渡されたのは「喜翆荘」という名と、電話番号が書かれた一枚の紙切れだけ。住み慣れた街、母親、そしてクラスメイトの種村孝一に別れを告げ、まだ出会ったことのない祖母がいる街で暮らすことになった緒花は、海岸線を走る列車からの景色を見ながら、これから始まる新たな生活に思いをはせるのだった。
エピソード2
復讐するは、まかないにあり
「従業員として働きながら高校に通うこと」と、祖母である四十万スイから厳しく言われ、スイが経営する温泉旅館「喜翆荘」で、新たな生活を歩み始めた緒花。それは思い描いていた生活とはほど遠い世界だった。だが彼女は、板前見習いとして住み込みで働く鶴来民子や同じ仲居の押水菜子をはじめ、喜翆荘で働く従業員たちと打ち解けようと孤軍奮闘。しかしその頑張りが裏目に出てしまう。
エピソード3
ホビロン
喜翆荘で長逗留をしている売れない小説家、次郎丸太郎。彼の書きかけの原稿をゴミだと勘違いして捨ててしまった緒花は、次の朝、まかないの支度途中に姿を消してしまう。「東京に帰ってしまったのでは?」と心配する従業員たち。しかしスイは、そんな彼らを横目に旅館の大掃除を命じる。掃除のため次郎丸の部屋に向かった菜子だったが、次郎丸に、かたくなに掃除、そして部屋に入られることを拒まれてしまうのだが…。
エピソード4
青鷺ラプソディー
民子、菜子と同じ学校に通うことになった緒花。東京から来たということで女生徒たちには質問攻めに、実は男子に人気のある民子と一緒に住んでいるということで、男子生徒からは興奮気味に詰め寄られる。その勢いに戸惑う緒花を救ったのは、クラスメイトであり、有名温泉旅館「福屋」の一人娘である和倉結名だった。にぎやかにスタートした緒花の学校生活だが、校舎裏で男子生徒から告白を受けている民子の姿を目撃する。
エピソード5
涙の板前慕情
喜翆荘の板前であり民子を指導する先輩でもある宮岸徹。緒花と民子は、彼がホットパンツ姿の結名をバイクに乗せ走り去るのを目撃する。驚く二人だったが、翌日、板長の富樫蓮二から徹が来ないことを告げられた民子は、さらにショックを受ける。事情を知った菜子や次郎丸、仲居頭の輪島巴らも加わってあれこれ推測するも、次郎丸が仕入れた情報により、福屋旅館による徹の引き抜きという結論に至るが…。
エピソード6
Nothing Venture Nothing Win
ある朝緒花が玄関を掃除していると、車に乗ったひとりの女性が現われる。 彼女こそ、経営が苦しい“喜翆荘”を立て直すべく、叔父であり番頭である 四十万縁(しじま・えにし)が雇った経営コンサルタント川尻崇子(かわじり・たかこ)だった。 実は、ほぼ毎月やってくるという崇子から今回提案されたのは、仲居の服装を一新する案だった。 ド派手な衣装を前にとまどう従業員たちだが、崇子の迫力と縁の勧めで、 とりあえず服装を変え仕事をすることに。
間島淳司
浜田ケンジ
伊藤かな恵
能登麻美子
梶裕貴
久保田民絵
戸松遥
豊崎愛生
小見川千明
本田貴子
安藤真裕