楠武人(福山雅治)30才。とある歯科医院の医師として、きわめて真剣に患者の治療に勤しんでいる。もちろんこの日もその端整なマスクを大きな白いマスクで隠して、一人の女性の治療にあたっていた。 「はい、すぐ終わりますよ」。歯科衛生士・明美(森詠美)に指示を出しながら手際よく治療を済ませる。と、ここまでは普通の歯科医。だが、ここからが武人の本領発揮だった。おもむろにマスクを外すと、患者の女性にさりげなく、「次の予約ですけど・・・今夜の7時なんてどうですか?」。端整なマスクにNOと言えるはずのない患者。医師たちの冷ややかな視線も武人には関係ない。楽しい今夜のことを思えば・・・。 そしてその夜、武人の思惑通りに展開していた。「二人の思い出作りは、都内のシティホテルなんかじゃいやだろ?」と、バリ行きの航空券をちらつかせ、女を即刻その気にさせるという武人の必殺ナンパテクニック。しかし、ホテルまでと乗り込んだタクシーの中でキスしようとしたその時だった。「お客さん!困るなぁ、やめてくれませんかね、そぎゃんいやらしかこと」。いい所を引き止める、しかも聞き覚えのある声が運転席から聞こえたのだ。「・・・・・・リュウ太ぁ?」武人が驚きの声を上げた先には、武人と同郷の中西リュウ太(ユースケ・サンタマリア)の姿があった。 リュウ太は就職していた建設会社が倒産し、上京してタクシーの運転手をしていることを話し、さらに武人が昔も似たような手で女をだましてはエッチしていたことまで話しまくり、その夜の武人のお楽しみをオジャンにしてしまったのだった。武人はリュウ太と共に部屋に帰るが、そこにはまたもや女に振られた友人・大友克明(立川政市)が。男3人旧友の再会である。 結局、その日用意されていた武人の夢のバリ行きチケットは、リュウ太と二人のむさい男旅に使われることになってしまう。 さて、同じ頃、ある大会社のパーティ会場に関係者でもないのに潜り込んでいるOLがいた。小山田千草(木村佳乃)24才。いい男をオトすため、日夜大手会社の社員たちに接近を試みているモテないOL。 この夜もターゲットを絞ったパーティに潜入したまでは良かったのだが、その会社のOL達に見つかり、吊し上げられすごすごと退散せざるを得ない状況に追い込まれ会場を出て行こうとした、その時だった! その日のパーティのくじ引きの目玉、バリ島3泊4日のペアクーポン券当選者番号が発表される。なんと千草が当選番号の札を握り締めていたのだ!「当たってる・・・・・・」涙で目を潤ませる千草・・・。 数日後、バリ行きの飛行機に、武人とリュウ太、千草と友人のみゆき(畑野浩子)は奇しくも同乗。千草は、機内で物をのどに詰まらせて苦しむ老人を、一人の医者として武人が救ってやった姿を見て一目惚れ、バリのターゲットを武人に絞った。 千草はホテルで見つけた武人に早速接近して、スキューバを一緒にする約束を取り付ける。しかし、翌日その場にはリュウ太が誘ったという彩(板谷由夏)も姿を現したのだ。前日、浜辺でナンパしてる時に偶然再会した武人のかつての恋人、彩。千草は彩の存在が気になった。 溺れかけた彩を助けた武人が、ためらわず唇を当て人工呼吸をしたことも気にかかった。でも、どうしても武人への思いを断ち切ることができなかった。「男の機嫌無理してとるな!」と一緒に楽しく飲むはずだった席で言われようが・・・。 武人は、彩のこともあってすっかり泥酔してしまった。千草はそんな武人を一人で部屋に運び、ベットに寝かせ、それからしばし考え、ためらいながらも、思い切って隣に潜りこむと自分の胸に武人の手を押しつけたのだ。「・・・・・・!」驚き我にかえる武人。そして、ニコリ。微笑む千草・・・。 2週間後。東京。武人の歯科医院に駆け込んできた患者がいた。なんと千草。もちろん武人がいるとは知りもしない。驚いた武人は知らないフリをし、治療中も顔のマスクが取れないように必死だ。が、その瞬間、マスクが取れた・・・。武人に、気づいていて気づかないフリをされたことにショックを受けた千草は、そのまま医院を飛び出した。