昭和二十七年。私立の女子校に通う楠本頼子は、年老いて醜くなっていく母・君枝に憎悪をつのらせる一方で、聡明で美しい憧れのクラスメイト・柚木加菜子に魅了され、感化されていく。ある日、なぜ自分のように貧しく父親もいない子と付き合うのか、と尋ねた頼子に対し、加菜子は奇妙なことを口にする。「君は私の、そして私は君の生まれ変わりなんだ。」頼子は、加菜子と一緒に湖へ行こうと誘われ、夜の武蔵小金井駅で待ち合わせるのだが…。
加菜子をはねた電車に偶然乗り合わせた刑事の木場修太郎は、泣きじゃくる頼子から事情を聞く。病院には増岡と雨宮、加菜子の姉の柚木陽子らが駆けつける。加菜子の深刻な容態を知った陽子は、懇意にしている名外科医のもとへ加菜子を移すと告げる。
加菜子を乗せた救急車は、箱形の建物、美馬坂近代医学研究所へと到着する。美馬坂の手術を受けた加菜子は、この夜奇跡的に命を取り留める。暫くして、加菜子を誘拐するとの脅迫状が陽子の元に届く。更に木場は、頼子から「黒服に手袋をした男が加菜子を突き落とした」という新たな証言を得る。
加菜子が消えた。程なくして医師・須崎の他殺死体が発見され、雨宮は謎の失踪を遂げる…。その頃、関口は出版社にいた。編集者たちの話題は新鋭作家・久保竣公と、武蔵野周辺で頻発しているバラバラ事件のこと。相模湖で出た両足とは別人の右腕が、新たに二本発見された。
“千里眼”を持つ探偵・榎木津礼次郎のもとに、弁護士の増岡が調査依頼に来る。その内容は、“柚木陽子の娘・加菜子を捜して欲しい”というものだった。一方、関口は三鷹の御筥様を潜入取材して失敗したという鳥口から話を聞く。鳥口は、御筥様がインチキ宗教であると断言する。
初対面の鳥口の幼い頃のことを、まるで千里眼のように言い当てた京極堂。神社の神主で陰陽師でもある京極堂の優れた観察眼・推理力・知識に、鳥口はすっかり心酔する。そんな鳥口は、ある男から編集部に「御筥様の信者リストを売りたい」と密告があったこと、更に、御筥様の周辺取材をして得た情報を京極堂たちに聞かせる。
平田広明
声の出演
森川智之
関貴昭
檜山修之
諏訪部順一