
三千円の使いかた
中学生だった美帆に、祖母の琴子はこういった。「人は三千円の使いかたで人生が決まるよ」 「……人生が決まるってどういう意味?」 「三千円くらいのお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていくということ」 何事にもきっちりとした祖母の言葉を胸に刻んで大きくなった美帆……のはずだったが! 就職して1年。御厨美帆(24)は東京・下町の実家を出て、憧れの都内のおしゃれエリアで一人暮らしをスタート。 家賃は9万8000円。学生時代から付き合っているイケメン彼氏とラブラブに過ごし、雑用だけど仕事も順調、将来のための貯蓄などには考えも及ばず、好きなもの、好きなグルメ、好きなファッションに包まれる毎日… 祖母の言葉などすっかり忘れ、「今が楽しくなきゃ意味なんてない!」とばかりに社会人ライフを満喫していた。 しかしある時、暗雲が立ち込める。 美帆の勤める会社で最も信頼でき憧れの存在でもある先輩の街絵さんが病気で倒れ、そのまま会社を辞めることになる。胸にぽっかりと穴が開く美帆、そんな美帆を優しく彼氏が包み込んでくれる…と思いきや、学生から社会人になり2人の間に隙間風が。悶々とした気持ちを抱えながら過ごす日々。 「私は本当にこのままでいいのだろうか」。 悩める美帆に訪れる、ある偶然の出会い。そして美帆の人生が少しずつ変わり始めることに…。 一方御厨家では……夫の遺産1000万円をコツコツと増やし目標を達成したものの、逆に生きがいを失ってしまった祖母。さらに定年間際の無口な夫とギクシャクし熟年離婚も脳裏をよぎる上、突然病気の宣告を受けてしまう母など、女性たちが人生の岐路を迎えていた。 「私たちは何のためにお金を稼ぎ、何のために貯蓄するのか?」 御厨家の女性たちは目の前の現実とどう向き合い、克服していくのか? 彼女たちにやってくる未来とは!?