天保太夫一座をひきいる泣き節お艶(山田五十鈴)のもとに、人気絵師の安藤広重(緒形拳)がやってきた。広重はお艶はじめ、火吹きのブラ平(芦屋雁之助)、噺し家塩八(古今亭志ん朝)、駒つかいの小駒太夫(ジュディ・オング)ら一座の裏稼業を見抜いており、東海道五十三次の旅の途中で目にした各宿場の悪人の所業をしたためた十三枚の絵をさしだし「天にかわって許せぬ悪を仕置してほしい」と頼む。役人に追われて一座に逃げ込んできた高野長英(近藤正臣)も加わって、かくて殺し旅は始まる。まず手はじめは江戸一番の大名賭場を開く高倉丹波守だ。©松竹・ABC
広重(緒形拳)の戸塚宿の絵を火にあぶると「かまくら道」の道しるべが赤く染まった。この道は鎌倉の駆け込み寺への近道だが、美人の人妻が通りかかると、きまってひとりのヤクザがあらわれ、何かと手助けをした。男の名はお助け紋三郎(岸田森)。実は紋三郎は駆け込み寺案内所と看板を掲げる蓬萊屋(岡田英次)と手を組み、駆け込み途中の女をだましては遊女にたたき売っていたのだ。これを知ったお艶(山田五十鈴)らは---。©松竹・ABC
おのぶ(加賀まり子)は、旅の絵師・清吉と相愛の仲だったが、清吉に急死され、やけになって女郎に身を落としていた。蘭兵衛(近藤正臣)が調べると、清吉は代官所の手付役・小幡(和田浩治)に殺されていた。小幡は遠州屋ら、好色な豪商仲間を喜ばすため、清吉の描いたあぶな絵を手に入れようとして断わられ、彼を斬ったのだ。その小幡が小駒(ジュディ・オング)に目をつけた---。©松竹・ABC
お艶(山田五十鈴)らがやってきた浅茅ヶ原は、将軍家に献上する鶴の御料地だが、ここ数年来鶴は渡ってこず、御膳奉行の前沢(草薙幸二郎)らはこれを隠して、別の肉を鶴として献上していた。伊川新兵エは事実を知って前沢に切腹させられ、息子の小一郎(河原崎次郎)も殺された。残された小一郎の妻しの(今出川西紀)はすべてをお艶に打ち明ける---。©松竹・ABC
水もしたたるような美男を首領とする盗賊が庄屋屋敷を襲い、六歳の娘、お咲をのぞいた一家を惨殺した。お咲は首領の顔をみている。この首領の正体は、茶問屋・壺屋の主人、春之助(ピーター)で、女装をしては役人の追手を逃れていたのだ。しかも春之助は、かってお艶(山田五十鈴)の三味線の弟子で、いま、お艶らが狙うからくりの相手だった---。©松竹・ABC
掛川宿の庄野の手代、清太郎(綿引洪)は、自分の子どもを身ごもるおわかを山賊を装った仲間に殺させて、近く庄野の婿養子に入ることになっていた。おわかの残した子どもは妹のおふじ(赤木美絵)が育てていた。清太郎を始末しようとしたお艶(山田五十鈴)らは、清太郎が小駒(ジュディ・オング)の生き別れになっていた兄だと知る-。©松竹・ABC