昭和22年、犬神財閥の創始者であった犬神佐兵衛が、莫大な遺産と三種の家宝「斧・琴・菊」を残してこの世を去った。佐兵衛の遺言を盗み見た古館弁護士事務所の助手・若林は、犬神家に血みどろの相続争いが起きることを予見し、名探偵・金田一耕助に調査を依頼する。ところが、金田一が犬神家の人々が住む那須に到着した直後、若林は何者かに毒殺されてしまう・・・。
このままではさらに恐ろしいことが起きると感じた古館弁護士に改めて捜査を依頼された金田一が、遺言発表の席に立ち会うと、そこに、出征以来、行方不明だった佐兵衛の孫のひとりである佐清が現れ、黒頭巾の下にかくされていた白い仮面姿を披露。そこで読み上げられた遺言状には、佐兵衛の3人の孫である、長女・松子の息子・佐清、次女・竹子の息子・佐武、三女・梅子の息子・佐智のいずれかと結婚することを条件に、犬神家の全事業と全財産を、血縁者ではない野々宮珠世という恩人の孫娘に譲ると記されていたのだった・・・。
犬神佐兵衛の遺産相続をめぐって遺族たちの間に不穏な空気が漂うなか、犬神佐武の生首が菊畑で、胴体部分が湖で発見された。殺人事件にまで発展した状況を受け、白い仮面姿の犬神佐清は頑なに拒んでいた指紋照合に応じ、本人であることを立証する。同じ頃、近くの旅館に宿泊していた謎の復員兵が佐武殺しの容疑者として浮上する・・・。
佐武の通夜が行われた後、野々宮珠世の部屋に謎の復員兵が侵入。珠世の悲鳴を聞きつけ、復員兵を屋上に追いつめた猿蔵は、何者かに背後から殴打され、昏倒してしまう。その猿蔵を追って屋上にたどり着いた金田一耕助らは、白い仮面を剥ぎ取られ、気絶している佐清を発見。金田一は、容疑者の復員兵に共犯者がいると推察する・・・。
その後、空家となっていた旧犬神邸で、琴糸が首に巻き付けられた犬神佐智の死体が見つかり、事件はますます混迷を極めていくのだった-。